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昔は海だったターミナル「横浜」が“ナゾのダンジョン駅” になった理由

“日本のサグラダ・ファミリア”はどうして生まれたのか

2021/05/10

 日本一のターミナルはどこか、という命題がある。だいたいの人が、新宿駅だと答えるだろう。1日にのべ300万人をゆうに超える人が利用する新宿駅は、たしかに日本一、いや世界一のターミナルである。

 ただ、なにもお客の数だけで評価する必要もないだろう。たとえば、どれだけの路線が乗り入れているのかも、ターミナルの規模を表す尺度のひとつ。その点においても、もちろん新宿駅は圧倒的だ。しかし、そんな世界の新宿駅を凌駕するターミナルがひとつある。300万都市・神奈川県横浜市のターミナル、横浜駅である。

「横浜」は“日本のサグラダ・ファミリア”

 横浜駅には、JR各線のほかに京急・東急・みなとみらい線・相鉄・横浜市営地下鉄の6社が乗り入れる。これは新宿駅(JR・小田急・京王・都営地下鉄・東京メトロ)を上回り、日本で一番多い。

 歴史面をとっても、「横浜」を名乗るターミナルは1872年の鉄道創業時に誕生した。肝心のお客の数にしてもJR東日本では新宿・池袋・東京駅に次ぐもので、JR全体でも大阪駅に次ぐ日本で5番目だ。横浜駅もある意味では日本一のターミナルといっていい。

日本最大級のターミナル「横浜」には何がある?

 ところが、新宿駅がそうであるように、巨大なターミナルは途方もなく広くて複雑である。とりわけ横浜駅は駅のどこかしらで延々と工事が続けられていて、“日本のサグラダ・ファミリア”と呼ぶ向きすらある。

 アントニ・ガウディが設計したバルセロナの本家サグラダ・ファミリアは1882年に着工して今も建設が続く。それになぞらえて工事の終わらない横浜駅を揶揄したものなのだろうが、本家では明確な完成図が用意されている。対して、横浜駅の場合はゴールもなく乗り入れ路線やお客の増加に合わせて拡張し続けてきた歴史なので、なんだか本家に申し訳なくなるたとえである。

今回の路線図。横浜は6社が乗り入れる日本有数のターミナルだ

 そんなわけで、横浜駅は6社線が乗り入れる日本有数のターミナルである。毎日使っている人も多いだろうが、だいたいそういう人は横浜駅での行動パターンは決まっている。乗り換えパターンも京急→JR、相鉄→東急、地下鉄→JR……と固定化しているだろうし、寄り道先のパターンにしたって、高島屋やヨドバシカメラなど人によって定番があるだろう。「相鉄→東急」派の人にとって、京急の存在などあまり目に入らない。巨大なターミナルとはそういうものだ。

 

 そしてそうした巨大さが、人を迷わせる。初めて横浜駅にやってきた人は、目的の場所にたどり着くまでにかなり難儀するに違いない。まさしく、ダンジョンである。今回は、そんな巨大ターミナルの横浜駅を歩いてみようと思う。