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2021/06/05

性行為が脳出血を招く2つのメカニズム

「性行為の最中の脳卒中は、以前から指摘はされていました。以前勤務していた大学病院救命救急センターで、10年間に搬送されてきた脳卒中1605例のうち、発生状況が明らかな957の症例について詳しく調べたことがあるんです」

中原邦晶医師

 と語るのは、東京・町田市にある「なかはら脳神経クリニック」院長の中原邦晶医師。調査の内訳を見ると、「排尿・排便」の15%を筆頭に、「就寝中」13%、「自宅でくつろいでいるとき」13%、「入浴中」11%、「就労中」10%、「外出・買い物中」10%……と続き、「性行為」に起因するのは1%にあたる9例だった。

 この9例を詳細に分析すると、男性8例に対して女性は1例、平均年齢は49.1歳。疾患の比率は「脳出血」3、「くも膜下出血」6、「脳梗塞」はゼロだった。発症場所は「自宅」の4に対して「ホテル・風俗施設等」が5。そして二人の間柄については「夫婦」3、「婚外」5、「単独(自慰)」1という結果となった。

 圧倒的に男性に多い理由を、中原医師はこう推察する。

「女性ホルモンのエストロゲンには血管や脳を保護する作用があるので、閉経前の女性の脳卒中のリスクは低い。ただし、閉経後はエストロゲンが急激に低下するので安心はできません。この調査で1例だけいる女性も60代の方です」

 中原医師によると、性行為が脳出血を招くメカニズムは、大きく二つのルートが考えられるという。

「性行為の最中は呼吸が早まる、つまり過換気になるので、二酸化炭素量が低下して血管が収縮します。その収縮した狭い血管に血液が流れ込むので、血管に対する圧力が急激に上昇して出血のリスクを高める――というのが一つ目のルート。

 もう一つは、行為中に“いきむ”ことで胸の圧が上がることによるもの。胸の圧が上がると全身から心臓に戻る血液の量が減り、心臓から全身に送り出す血液量が低下します。すると全身の血圧が下がるので、今度は心臓が、その反動で大量の血液を送り出そうとする。元々動脈硬化がある人の血管は、この急激な血圧の上昇に耐えられなくなって出血を招くのです」