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2021/06/05

スポーツは「脳に悪い」?

 それなら同じく心臓に負荷がかかるスポーツでも、リスクは同じではないだろうか。前出の「脳卒中の発生状況」のデータを見ると、「スポーツ」の割合は「性行為」と同じ1%を示している。

 しかし中原医師は、この数字以上に性行為のほうが危険性は高い――と分析する。

「一般的な運動は、呼吸数や脈拍が直線的に上昇していくのに対して、性行為、特に男性は射精時に急激に脈拍と呼吸数が上昇し、その後一気に落ちていく、という特徴的な動きを見せます。そのため脳圧への影響もスポーツよりセックスのほうが遥かに大きく、脳出血のリスクという点でも差があると思われます」

 性行為と脳卒中を結びつける要因は他にもある。「環境」と「パートナー」だ。

 日常に近い状況よりも「非日常」のほうが血圧は高まる。つまり、「自宅」よりは「自宅以外の場所」、「配偶者」よりは「配偶者以外の人」のほうが興奮は高まり、血圧も上昇しやすい。そのため風俗や不倫などのほうが脳卒中を引き起こす危険性は高くなる。

 当然のことながら、基礎疾患の有無は大きく関与する。動脈硬化はもちろんだが、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病などがある人は要注意。脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかっている人は、相手や環境に関係なく、セックスは後回しにして、まずそちらの治療を優先すべきだ。

 中原医師らのこの調査対象となった9つの症例。「予後軽快」は2例、「軽度の後遺症」が2例、「深刻な後遺症」が4例、そして「死亡」が1例。

(中原医師らの研究スライドより)

 9例中8例は救急車で搬送されてきたが、1例は病院の前に患者を置き去りにして、連れてきた人物は立ち去っている。

 それでも病院に運んでもらえるだけでもいい方で、救命処置を講じることなくパートナーが逃げてしまえば、最悪の場合「突然死」として処理されることにもなりかねない。統計に出ないだけで、そうした不慮の死を遂げるケースが一定数存在することは想像に難くない。