1ページ目から読む
2/4ページ目

若い女性に人気の「K-POP留学」

 この語学学校「K Village Tokyo」では、様々な留学コースを用意しており、パンフレットにはこんな文句が並ぶ。

〈3ヶ月からの長期留学、K-POP留学など、皆さまの韓国留学をサポート!〉

 先に受講生が言った「プチ留学」とは、語学の研修にダンスやボーカルレッスンなどを組み込んだ“K-POP留学”を指している。

ADVERTISEMENT

 韓国語学校は、英会話学校から想像されるビジネス主体の語学学校とは大きく様相を異にしているのだ。同校の売りは、基本料金が月額2200円、1レッスンあたり550円という手軽さだが、大半の受講生は1時間3300円の個人レッスンを希望している。コロナ禍の中、もちろんオンラインレッスンも用意されているが、直接の個人レッスンの人気は衰えないという。

「韓国語を学ぶことのハードルを思いっきり下げました。受講生の90%は女性ですね。それも、大半が20代の方です」

 そう語るのは、同校を経営する「K Village Tokyo」社長、桑原元就(41)。“第4次韓流ブーム”といわれる状況を如実に反映しているという。韓国ドラマを字幕無しで観たい、K-POPアイドルがコンサートで話しているハングルを理解したい……。そんな欲求が彼女たちを語学学校に向かわせている。

韓国での「就職」は苛烈そのもの

“史上最悪の日韓関係”というフレーズが決り文句となってしまっているが、この学校を歩いていると、K-POPや韓流ドラマ、映画などのエンターテイメント分野に牽引されて、日韓に隔たりは存在しないようにすら感じる。

 それは、日本よりは政治状況の影響が反映されやすい韓国でも同様のようだ。潜在的な“日本好き”は少なくないのだという。だからこそ成り立つ事業も存在している。

写真はイメージ ©istock.com

「韓国社会には“就準生”という言葉があります。知っていますか?」

 こう話すのは、「K Village」のエリアマネージャーを務める金萬載(37)。日本語を流暢に話す金が言及した“就準生(予備就職準備生)”とは、韓国社会が抱える社会の歪である。

 激しい競争社会の韓国では、若者が“恋愛、結婚、出産、人間関係、マイホーム、夢、就職”という7つの希望を諦める「7放世代」という言葉が生まれている。日本でもこのところ知られている言葉だが、すべては韓国経済の不安定さから生まれたものだ。

 なかでも韓国での「就職」は苛烈そのもの。1997年に起きた「アジア通貨危機」は韓国経済を直撃。国家破綻に等しく、一時はIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれた。