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大卒内定率、韓国は67・1%

 これを機に、韓国経済のあり様は劇的に変わる。それまで年功序列が比較的重んじられていた経済界は、一気に能力主義に転換した。ハイスペックな技能を持ちえない社員は淘汰され、財閥系の大企業は学生にとって、極めて狭き門となった。中小の企業は、正社員より非正規社員の雇用を増やした。

 韓国ではTOEIC900点以上の学生も珍しくなく、JLPT(日本語能力試験)で好成績を持つ学生も少なくない。それらも全ては就職難のため、少しでも条件の良い、願わくは財閥系大企業に就職するためのものだ。

 しかし、現実は厳しい。先の「七放世代」が象徴するように、韓国の就職内定率は日本のそれに比べ極端に低い。2019年の大卒内定率は67・1%(韓国教育部)、日本のそれが82%を越えているのに比べるとその厳しさが分かるだろう。

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 狭き門を突破するため、大学そのものが就職するための専門学校化し、学生の身につけた能力は高い。しかし、希望の企業に就職できるのは一握り。こうして、「能力は高いけれども就職先を探しあぐねている」という“就準生”が、韓国には大量に生まれているわけだ。

日本企業の採用担当者が面接のためソウルへ

 コロナ禍の前の2019年5月。場所はソウル。

「K Village」が口コミで声をかけ、IT技術者などを求める日本企業十数社の採用担当者が、面接会のためにソウルの地を踏んだ。

ソウルでの面接会の様子(「K Village Tokyo」提供)

 韓国側では、FacebookなどSNSで呼びかけた日本企業への就職を望む学生ら約100名が集められていた。

 アクシデントもあった。当初、面接はソウル市内のホテルが予定されていた。ところが、数日前に日韓の外交懸案となっていた慰安婦問題が政治的にこじれ、ソウル市内で日本政府に抗議するデモが起きていた。

 会場となっていたホテルは韓国政府に慮って、会場の使用を土壇場でキャンセルしてきた。日韓に横たわる政治問題は常にビジネスシーンに影を落とす。その面接会は、急遽確保したビルの一室で行われることになった。

 日本からは、歯科医療のプラットフォームビジネスを行う「メディカルネット」、アジアを舞台にした旅行業からITオフショア事業まで手掛ける「エアトリ」、企業の広報サービスを行うベンチャー企業などに混じって、大手自動車メーカーの人事担当も参加していた。