「いやあ、すばらしいですね」
「やっと出てきた感じがします」
記者たちが絶賛するセッターが、日本女子バレーボール界に現れた。
彼らが異口同音に称えるのは、セッターの籾井あき(20)だ。バレーボール女子日本代表は、5月25日に始まった国際大会「ネーションズリーグ」に参戦している。世界ランク7位の日本を含む強豪16カ国が参加し、オリンピックの前哨戦に位置づけられた大会だ。
しかもコロナ禍で次々と大会が中止になり実戦経験を積む場がなかった中での貴重な機会。ファンの1人として「いまの日本はどんなもんだろ」と楽しみにしていた。
最大の興味は、2017年に木村沙織が引退して以来いまだ定まらないエースの行方と、アメリカや中国のような強豪との力関係だった。しかしタイとの初戦に楽勝すると、2戦目の世界ランク1位の中国に3-0でまさかの完勝。その後ブラジルにこそ負けたものの、韓国、イタリアを撃破し、6月2日には世界5位のロシアに3-0のストレートで勝利した。6戦を終えて日本は5勝1敗。上位4チームが進出できるファイナルラウンド圏内を走っている。
セッターは高校2年生から
そんな日本チームの中で、籾井は一際大きな注目を集めている。日本代表では初出場だが堂々とプレーし、コートの中で誰よりも存在感を発揮している。バレーを長く取材するスポーツ紙の記者も、籾井についてはマークしていなかったと驚いていた。
「とりわけ目を引くのは、バックアタックやミドルブロッカーへのクイックをうまく使うバリエーションの広さです。所属先のJTマーヴェラスでは外国人エースを使う素直なトスが多い印象でしたが、これほどの引き出しがある選手だったとは。まだ20歳と若く、中学ではスパイカーだったので本格的にセッターを始めたのは高校の途中から。それなのに初出場の代表戦でも冷静にプレーしているメンタルの強さにも驚きます。アタッカーの攻撃が決まっているのも、彼女のトスワークによる部分は間違いなくありますね」