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「ようやく、ですよ。8年間待っていたんですから。日本の女子バレーは、セッターが定まらないと強いチームはできません。過去にも、現在日本代表の監督を務める中田久美さん(55)や、アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でオリンピックに出場し日本に28年ぶりの銅メダルをもたらした竹下さんなど多くの名セッターがいました。

 ただ竹下さんの存在が大きかった分、彼女が2013年に引退すると“ポスト竹下”探しは難航してきました。真鍋政義監督時代のリオ五輪は宮下遥と田代佳奈美の2人体制、リオ五輪後に就任した中田監督も複数のセッターを起用してきましたが、周囲を納得させるだけの結果を残す選手はついに現れませんでした。でも籾井は今大会で活躍し、しかも日本が待ち望んでいた高身長のセッターです。竹下の場合は身長が低いため、どうしてもブロックの場面で相手に狙われがちでしたが、籾井はその点でも穴がない。竹下以上の選手になるよう、期待したいですね」(Vリーグ関係者)

リオ五輪にセッターとして出場した宮下遥 ©文藝春秋

メダル予想からも外れていた女子バレー

 石川祐希や柳田将洋が現れた男子バレーに押されがちだった期待感も、徐々に盛り上がりを取り戻しつつある。

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「竹下が引退した2013年以降は国際大会でも結果が出なくなって、『日本女子は終わり』という声も出るほどでした。東京オリンピックのメダル予想でも、バレー女子を押す人はほとんどいませんでした。しかし今大会でその空気は一変したと言えます。その変化の中心にいたのは、間違いなく籾井でしょう。彼女はまだセッターになって4年で唯一の弱点は経験ですが、オリンピックの1年延期はその経験を積む時間を与えてくれました。あらゆる意味で“持ってる”選手ですね」(前出・スポーツ紙記者)

高校時代の籾井あき ©AFLO

 バレー通からの評価だけでなく、ファンからの人気も急上昇している。

「試合中は険しい表情ですが、笑うと途端にあどけなさも出ます。試合以外の場面ではのんびりした表情の時も多く、趣味はパン作りや料理。試合でのかっこいい姿とのギャップも魅力ですね」(同前)

 中田久美、竹下佳江の後継者、そして木村沙織の引退後スターが誕生していなかった女子バレー界の大きな期待を背負って、籾井あきの大会はまだ続いていく。