「女性の活躍が謳われて久しいですが、東京地検特捜部長に女性が就く日は果たして来るのでしょうか」

 あるベテラン司法記者はこう語る。

 特捜部は東京、大阪、名古屋の3つの地検に置かれている。国税局の査察官、いわゆる「マルサ」が強制調査(家宅捜索)をして刑事告発した脱税事件をはじめ、証券取引等監視委員会(SESC)が刑事告発した株のインサイダー取引や相場操縦といった金融商品取引法違反事件、公正取引委員会が刑事告発した談合やカルテルといった独占禁止法違反事件に加え、特捜検事自らが発掘したり情報提供などを受けたりして行う独自捜査事件を手がけるのが特捜部だ。東京地検特捜部は6月8日、選挙区内で違法な寄付を行っていたとして公職選挙法違反の罪で、菅原一秀前経済産業相を略式起訴した。

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検察庁 ©️文藝春秋/菅原一秀前経済産業相 ©️時事通信社

初の女性特捜部長が誕生したのは「名地検」

「初の女性特捜部長が誕生したのは、地元で『名地検(めいちけん)』などと呼ばれている名古屋地検です。大阪地検特捜部で2008年4月から1年間、副部長を務めた田中素子氏は関西大学出身で、音楽プロデューサーの小室哲哉氏による詐欺事件や障害者団体向け料金割引制度を悪用した郵便不正の捜査を副部長として指揮した大阪地検特捜部生え抜きのエースでした。

 大阪特捜初の女性部長の呼び声もありましたが、結局は1996年の創設と歴史も浅く規模も小さい名古屋特捜で2009年7月、部長の座を射止めたというわけです。田中氏は2019年から神戸地検検事正を務め、2020年に退官。現在は大阪弁護士会に所属して活躍しています。

初の女性特捜部長となった田中素子氏 ©️共同通信社

 女性2人目の特捜部長となったのは、2012年から名古屋特捜の部長を務めた河瀬由美子氏です。九州大学の出身で、『特捜検事』のイメージはあまりありませんでしたが、東京地検公判部の副部長や名古屋地検公判部長を経て、特捜部長に就任しました。現在は最高検で総務部長を務めています。