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ネットの口コミを鵜呑みにして

 2月からは理社も加わり、平日週2回、本格的に塾通いが始まると、私の不安はさらに増した。娘の塾では成績順に3クラスに分かれていて、娘は最下位からスタート。もちろん、冬期講習中に一緒だった天才君はそのクラスにいない。私が失敗したのは、このときネットで塾の口コミを調べまくったことだ。「下位クラスの子は大抵下位クラスのまま卒業」、「上のクラスに行くなら入塾3カ月が勝負」。

 また、巷では中学受験のリアルを講師目線から描いた漫画『二月の勝者』が話題になっていた。それを読んだママ友から、「塾が手厚くフォローするのは上位層のみ。それ以外の子は塾の単なる“顧客”で、ただ塾代を払わせるために在籍させているんだって」と聞かされ、私はそれも鵜呑みにした。

「早く上のクラスに行かなければ」。そう思った私は、娘にとにかく勉強を強要した。下位コースと上位コースでは宿題の範囲も違うのだが、すべてやらせた。「この範囲までやる必要ないって先生言ってたよ」。娘がそう言おうものなら、「そんなんじゃ医者になんてなれないよ!」「上のクラスの子は全部やってるよ!」「どれだけ塾代払ってると思ってるの!」と、ネガティブなワードを並べ立て、怒鳴りつけた。だってこのままだと、我が子はただ塾にお金を払い続けるだけの生徒になってしまう。

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もしかして、私がやっていることって教育虐待?

 ちなみに、旦那は子どもの勉強については完全に私任せ。毎晩帰宅が深夜のためそもそも平日は一切子どもに関われないから、こうしたやりとりが毎晩繰り広げられていることは知る由もない。旦那はあてにできないうえ、受験期を迎える子の母親の多くは、年齢的に大抵更年期かプレ更年期に突入しているものだ。ただでさえイライラしているのに、そこへきて子どもの塾のフォローも重なるとなると、イライラは頂点を迎える。私がまさにそうだった。

 そしてある晩のこと。夜遅くまで宿題をする娘のノートを覗いてみたら、あろうことか、算数の解答をそのまま書き写していた。怒りが振り切れた私は、娘のノートと鉛筆を取り上げ、バンと床に投げつけた。

 私にさんざん怒られ、疲れて寝入った娘の顔を見て思った。夜中の密室で子どもを怒鳴りつけて、追い詰めて、強制的に勉強をさせる。もしかして、私がやっていることって教育虐待? まだ4年生なのに。しかも、私が長女の勉強にかかりきりの間、幼い兄妹はずっと放置されたままなのだ。

毎晩遅くまで机に向かい宿題をこなす(写真 著者提供)

 客観視できるだけの冷静さがかろうじて残っていた私は、不安になり、一足先に子どもが塾通いを始めていた高校時代の友人に相談してみた。私は彼女に、子どもの塾通いで我を失った自分を諫めてもらうつもりだった。ところが事態はもっとひどかった。