日本の大学の最高峰「東京大学」に初めて女性が入学したのは1946年のこと。それから75年――。時代と共に歩んできた「東大卒の女性たち」の生き様とは。
財務官僚を経て、弁護士となり、著名な法律事務所に勤務後、ハーバード大学ロースクールに留学、東大大学院博士課程修了。現在はコメンテーターとしても活躍する山口真由さん(2006年、法学部卒業)は、元恋人から「東大首席タイプと付き合いたい男なんか他にいないよ」「勉強はできるけど仕事はできないね」という言葉を投げかけられた経験があるという。どう受け止めたのか、話を伺った。(全2回の2回目/#1から続く)
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「女の子なら慶応の方がいいかもね」
――ご著書で、大学受験の時には、東大と慶応に合格されて、お母様が「女の子なら慶応の方がいいかもね」とおっしゃったというエピソードを拝見しました。
山口 実はそれも今思うと、私が他者に正解を求めてしまったケースなんです。その時のインタビュアーさんを満足させたかった。つまり「女子が東大に入ることを親に良く言われなかった」というような話を私に期待しているのかなと感じて、そういうエピソードを選んでストーリーテリングしてしまったところがあります。
――他者の期待を推し量って応えてしまったということですか。
山口 そうです。決して嘘は言っていないけれども、母の言葉のニュアンスなどを若干歪めて話していくうちに、後々、自分の書く文章でも整合性を図ることになりまして。それを目にした母から謝られたので、「お母さんが悪いわけじゃなく、あのエピソードは意外と引きが強かったんだよ」と伝えました(笑)。
――そうですか(笑)。この連載に登場された方で、母親から「東大に行ったらお嫁に行けない」と言われたという方もいたんです。
山口 そういう話のほうが、インパクトが大きくていいかな(笑)。
――なるほど(笑)。それもまた先ほどおっしゃっていた優等生的な考え方ですよね。
山口 そう言われたこともあります。私は話すのがあまり得意でないので、こうしてすぐにステレオタイプにはめようとしていたんです。でも、ストーリーを作ってその場で「正解した」と思っても、それを繰り返すうちに、自分が本来持っていた複雑さのようなものが消えていく気がしてきて。法律家の仕事にもそう感じたところがあります。結論があって、連綿たる事実から自分に有利なものだけを拾い集めてストーリーテリングしていく。事実はもっと複雑なのに、と感じますね。