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良い悪いじゃなく、合う合わない。そこに気づけてよかった

――ご病気にならなくてよかったですね。

山口 私もそう思います。財務省にしても、あの組織で評価されないということは、それまで常に評価されてきた人にとっては本当に苦しいことなんです。自分に何か欠陥があるんだという思いを強くしてしまうところがあるんですが、本当は良い悪いじゃなく、合う合わないなんですよね。そこに気づけたのはよかったと思っています。

――お仕事に関しては、当時の恋人の刷り込みがあったというお話もご著書で触れていましたね。「勉強はできるけど仕事はできないね」「東大首席タイプと付き合いたい男なんか他にいないよ」と言われたと。

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山口さんの著書『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)

山口 ちょうど私が事務所を早く出ていったほうがいいと言われていた時期ですね。彼と結婚することを考えていましたし、認められたかったから、仕事がうまくいっていないと気づかれたらどうしようと思っていました。心が安定している今なら、彼の言葉の中から私がマウンティングワードを選んで、貶められたというストーリーにして、責任を負わせていたところがあったと思います。

――「仕事できないね」などと言ってきたことはあっても、悪い人ではなかったと。

山口 悪人ではないです。彼は彼で自信がなかっただけなのに、精神状態が悪かった私はマウンティングされているように感じて、自己肯定感がすり減っていって……これもやっぱり、良い悪いというより、はまらなかったということかなと思います。

評価される側、選ばれる側に置かれるのは不利

――なるほど。そうした恋愛や結婚関係でいうと、この連載でよく「東大女子の王道」として出てきたのが、在学中に結婚相手を確保するというお話でした。

山口 確かに東大女子で結婚している人って、大学時代から付き合っていた人が多いかもしれないです。でも難しいですよね。東大女子の独占市場じゃなく、女子大の女子たちと並べられて、女性としてのものさしで評価される。私はやっぱり評価される側、選ばれる側に置かれるのは不利だと思いました。

 

――在学中にそう感じることがありましたか。

山口 男子ラクロス部のマネジャーをやっていましたが、選手たちはマネジャーに女性としての価値を求めているわけですよね。私は相手の期待に過剰に応えちゃう方だったし、「頑張らなきゃ」と気負って自分の持ち味が削がれていた。選ばれる客体の側に回るというのは、可能性を狭めると今は思いますね。

 ジャーナリスト・秋山千佳氏のルポ「東大女子のそれから」は、「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

写真=石川啓次/文藝春秋

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