1ページ目から読む
2/4ページ目

 傍聴席から見て手前から、池田、石川、大久保の順に元秘書たちが被告人席に腰かけ、検事と正対している。検察側の冒頭陳述が朗読されるあいだ、彼らは朗読する検事をじっと見つめていた。

明らかに動揺している男

 青白い顔に黒ぶち眼鏡をかけた奥の大久保は口を尖らせ、ほとんど表情が変わらない。だが、隣の石川は違った。はじめまっすぐ伸ばしていた背筋が、水谷建設の裏献金のくだりになると、尻をやや前にずらし、座りなおした。どうにも落ち着かない様子だ。背を曲げ、ふんぞり返るような姿勢になる。しきりに唾を飲み込み、喉が揺れた。次第に目のまわりが赤くなり、丸い童顔がみるみる紅潮する。明らかに動揺しているように見て取れた。

 石川の動揺を無視し、冒頭陳述書を手に、公判検事は水谷マネーを執拗に追う。石川に渡ったとされる問題の5000万円についてはこう言う。

ADVERTISEMENT

「川村は(04年)10月13日まで海外出張だったため、帰国日である13日までに5000万円を用意するよう会社に伝えた。そこから出金され、宅配便の茶封筒で届けられた……」

 冒頭陳述の朗読が終わると、石川の表情が緩む。頬を膨らませ、ふーっと息を吐いた。

小沢一郎と検察の攻防

 ついに始まった小沢一郎と検察の攻防。公判が近づくにつれ、小沢一郎の裁判対策が顕著になる。積極的にメディアに登場し、世論形成を図ってきたといえる。水谷功の懐柔も公判対策の一環に違いないが、それだけではない。初公判に臨み、石川は取調室における隠し録りを準備した。それは裁判が小沢一郎に悪影響を及ぼす危険性を考えたうえの戦法だ。焦点は小沢が持っていた4億円の現金の取り扱いである。

 陸山会の事務担当だった石川知裕は、政治資金規正法違反事件における捜査段階で、みずからの虚偽記載や小沢一郎への報告を認めてきた。

「小沢先生の金を隠したかった」

「先生に報告・相談した」

 検事の取調べに対し、石川はそう自供してきた。ところが、のちに態度を翻す。そのきっかけが、10年2月にいったん地検で不起訴処分になった小沢が、1回目の検察審査会で「起訴相当」とされたからにほかならない。小沢が強制起訴される危険性が高まるや、石川自身、みずからの罪についても無実を訴え始めた。