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「小沢事務所に1億円を運んだ」汚れた裏金を自在に操ってきた“政商”が獄中で告白した言葉の禍々しい“真意”

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #38

2021/06/14

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

note

運転手の供述内容とは

「ここまで調べているのか、と舌を巻いた」

 三重刑務所を出所した当時、水谷自身が私にそう話したが、案外正直な感想だったのかもしれない。社長だった川村もまた、特捜部の取調べに素直に答えている。取調べに対し、大久保から電話で現金の受け渡し期日を指示された、と供述した。川村はたまたま海外出張していたため、三重県桑名市の本社に戻る余裕がなく、帰国日である13日に、東京に5000万円を届けるよう伝えた。そのあと大久保に指示され、全日空ホテルで石川に渡す段取りを打ち合わせたという。宅急便の袋に詰めた5000万円を運んだのが、水谷建設の専務であり、専務もそれと合致する供述をしている。

 その地検の取調べでは、水谷建設の運転手がホテルに社長の川村を送り届けたとも証言している。その供述調書の下敷きになっているのが、前述した運転手の個人手帳だ。なぜ、何年も前の個人手帳が残っていたのか。そこについて、再び地検関係者が説明する。

「運転手は、日ごろから自分自身のゴルフのラウンドスコアーを手帳に記していたようなんです。だから、何年分もの手帳を手元に置いていたらしい。手帳は06年7月8日、脱税事件のときの家宅捜索で押収されていた。それを改めて見た検事が、受け渡し当日の記述に気づいたのだと思います」

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 水谷建設元社長の川村は帰国後、現金授受当日の04年10月15日の午前中まで仙台に出張していたという。運転手は、8時過ぎに水谷功を豊島区目白の自宅から東京駅に送り、仙台から新幹線で帰京する川村を迎えた。12時10分、川村が東京駅に到着。そのまま全日空ホテルに送り届けた、との運転手の供述が調書にまとめられているという。

「手帳には『ホテル』というメモ書きまであるらしい。検察はそれを全日空ホテルだとして、調書に記している。クロネコヤマトの袋を抱えてホテルに入った川村を玄関前で30分待ち、戻って来たときは紙袋がなかった、という内容です」(同前)