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「ほかの友だちみたいにテレビゲームや超合金のオモチャがほしかった」 カラテカ矢部が絵本作家の父に思う“大好きだけじゃない”気持ち

矢部太郎さんインタビュー#1

2021/06/20

育児ノートや僕の子どもの頃の作品・写真まで…

――今回の作品は、「主人公」であるお父さんにはどのように伝えたのですか。

 勝手に描くわけにはいかないので、連載を始める前に「こういうのを描こうと思っているんだけど、いいかな」と許可をもらいました。以前、お父さんから「『大家さんと僕』の次は『お父さんと僕』というタイトルで描いたら?」と言われたこともあったくらいなので、「描いていいよ」と言ってくれるだろうとは思っていたんですけど。予想通り、快諾してくれたうえに「参考に」と昔自分が描いていた育児ノートや僕の子どもの頃の作品、写真などもたくさん送ってきてくれて、「こんなものまで取っていてくれたんだ」と、驚きました。

 なので、『ぼくのお父さん』は、僕の記憶で描いたというよりも、お父さんの絵入りの「たろうメモノート」という育児ノートにあの頃の記憶を少しプラスして描いたという方が近いかなと思います。

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「たろうメモノート」は3冊なのに、姉の「メモノート」は38冊1800ページの大作!

――子どもの頃、この「たろうメモノート」の存在は知っていたのでしょうか。久しぶりに見て、どのように感じましたか。

 とにかくずっと絵を描いている人で、絵日記のようなものもたくさん描いていたので、何種類もある日記のなかに育児のことを描いたものもあることは知っていました。

 第2話「魔法」で「写真には映りすぎる」というお父さんのセリフを描きましたが、絵には見た目に映らないものを残す力があるように感じます。「たろうメモノート」にはお父さんの主観や目線が感じられて、あの頃お父さんが見ていた世界が疑似体験できる気がします。

 

 子どもの頃のお父さんってすごく大人だし、頼りにしていたんですけど、あの頃のお父さんより年上になってしまった自分が読むと、お父さんも悩んだり迷ったりしながら子どもと一緒に日々を過ごしてきたんだな、という気持ちがわかる気がしました。