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「漫画も気象予報士も外国語も、全部やらないと食べていけないから」 矢部太郎が語る“漫画が評価されたとき”の“米屋”のような気持ち

矢部太郎さんインタビュー#2

2021/06/20
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 大ヒット漫画『大家さんと僕』(新潮社)を描いた矢部太郎さんの最新作『ぼくのお父さん』(新潮社)。売れっ子漫画家になった自分を、矢部さんご自身はどう思っているのでしょうか。実の父である絵本作家・やべみつのりさんからのメッセージもご紹介します。(全2回の2回目。前編を読む)

「『大家さんと僕』は誰も読まないだろうと思って描き始めた」と語る矢部太郎さん

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子どもの目線で描いた『ぼくのお父さん』

――『ぼくのお父さん』は、大ヒットとなった前作『大家さんと僕』に次ぐ作品です。プレッシャーや気負いはありませんでしたか。

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 プレッシャーはそれほどなかったです。自然に描きたいテーマだったし、お父さんがユニークな人なので、きっと面白いものになるだろうという思いもあったので。ただ、『大家さんと僕』のときは、そもそも誰も読まないだろうと思って描き始めたので、自分の感覚だけで描いていた部分があったのですが、自分が思っていた以上にたくさんの方に読んでもらえたので、ギャグや言い回しが自分勝手にならないように気をつけました。

――「ぼく」という言葉がひらがなになっています。あえて『大家さんと僕』と変えたのはなぜですか。

 今回は、子どもの目線で描いているのでひらがなにしました。それと、カラーにしたのも思い入れがあります。何をするのも新鮮で、キラキラしていた子ども時代の思い出はカラーで表現したかったので、現代の自分はモノクロで、過去をふり返る部分はカラーで、と描き分けました。あっ、だからといって、今がモノクロのような毎日、という意味ではないんですけど……えーと……。

 

――大丈夫です、伝わります(笑)。オールカラーで豪華だなと思っていたら、カラーには「色鮮やかな思い出」というイメージがあるのですね。

「絵本作家のお父さん」の話を描くので、全体的に絵本っぽい感じがいいかなという思いもありました。見開きのイラストは、四季をイメージして描かせてもらいました。『週刊文春』の和田誠さんの表紙みたいな絵もいいですよね。いつかああいう絵も描きたいなと思っています。