縮小する高齢者市場
少子化の加速は、国内マーケットの縮小の加速を意味します。それは内需中心の日本経済にとっては大きなダメージとなります。
GDPにおける輸出依存度と輸入依存度を合計した数字を「貿易依存度」と呼びます。この数字が高いほど海外マーケットが重要で、低いほど内需の割合が高いわけです。国際通貨基金の「世界の統計」(2020年)によると、日本の輸出依存度は14.4%で、輸入依存度は13.8%。合計した28.2%が貿易依存度です。ちなみに韓国は64.7%、中国は34.2%です。
トヨタ自動車など海外展開する一部の大企業があるため、日本は加工貿易国のようなイメージがありますが、圧倒的に国内で利益を上げている企業が多いのです。
少子化の加速に伴う国内マーケットの縮小には20年ほどタイムラグがありますが、コロナ禍は目先の内需も縮小させました。高齢者の消費マインドを冷え込ませたことです。
重症化リスクが高い高齢者の中には、過度に警戒心を抱き、極端に外出を控えた人が少なくありません。近所のスーパーへ買い物に行く回数を減らし、通院まで控えるケースも見られました。感染を恐れて仕事を辞めたり、業績悪化で雇用を打ち切られたりした人もいます。
外出機会が減り、可処分所得が少なくなれば、消費を控えるのは当然です。現状の高齢者人口は3600万人ですが、平均で消費が1割減ったならば、消費者が360万人少なくなるのと同じです。
そもそも、人口が同じでも、若者が中心の国と「年老いた国」とでは、実質的なマーケットの規模は違います。高齢者は若者ほど大きな買い物をしないからです。
日本の国内マーケットは、人口減少で縮小するだけでなく、1人当たりの消費額も減るという「ダブルの縮小」に見舞われるのです。
2024年には団塊世代のすべてが75歳を超え、2042年にピークを迎えるまで高齢者数は増え続けます。この間、見た目の人口減少よりも早くマーケットが縮んで行くということです。
高齢社会というと、社会保障費の増大ばかりが注目されますが、マーケットの「ダブルの縮小」のほうがはるかに深刻な問題なのです。