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「四球のギリシャ神」の「ユークは何しにニッポンへ?」

 同じ頃、マイケル・ルイス著「マネー・ボール」が2004年のベストセラーになった。アスレチックスのビリー・ビーンGMが、年俸は安いが出塁率の高い選手を起用してチームを優勝に導く話だ。

 この本の中で、レッドソックスのケビン・ユーキリスは「四球のギリシャ神」と称えられた。2007年、松坂大輔がレッドソックスに移籍すると、好守、好打で松坂を支える頼もしいチームメイトとして日本でも人気になった。

レッドソックス時代のユーキリス ©️文藝春秋

 楽天の三木谷浩史オーナーは、ハーバード大学大学院修了。地元ボストン・レッドソックスの熱烈なファンで、イーグルスのチームカラーもレッドソックスと同じクリムゾンレッドにしたくらいだ。

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 2013年オフにFAになると楽天はさっそくユーキリスを獲得。MLBファンは熱狂したが、ユーキリスは腰部の故障が悪化しまともにプレーできる状態ではなかった。西武の菊池雄星から本塁打を打ったが、5月に足の故障で戦線離脱しアメリカに帰国。そのまま引退してしまった。年俸は3億だったが出場は21試合にとどまった。

 愛称はユーク。人気番組に引っ掛けて「ユークは何しにニッポンへ?」と揶揄された。本人はいたって誠実な性格だったが、残念な結果に終わってしまった。

「メジャー通算何本塁打」という触れ込み

 もはや日本のファンは「メジャー通算何本塁打」という触れ込みはほとんど信用していないのではないか? MLBでいくら実績があっても、NPBで通用するかどうかは別の話だ。

 巨人のゼラス・ウィーラーはMLBではたった2本塁打しか打っていないが、楽天に入団するとはつらつとした動きで外国人初の副キャプテンに選ばれた。昨年、巨人に移籍。今季はテームズ、スモークという大物外国人の入団で控えに回る予定だったが、テームズの負傷でチャンスが回ってくると、驚異的な打棒で今や打線の中心となっている。

楽天時代のウィーラー。外国人初の副キャプテンに選ばれた ©️文藝春秋

 タイムリーを打てば大喜びし、外野でも内野でも一生懸命のプレーを見せる。どの球場でも彼への拍手はひときわ大きい。

「置かれた場所で咲きなさい」と言う言葉はウィーラーのためにあるようだ。彼の活躍は、我々に、仕事をする上で一番大事なものは何なのかを教えてくれる。