「ロイヤル蒲田ボーイズと東京ブラザーズは仲良い」
シヴァは真剣な表情で答えた。やはり、ロイヤル蒲田ボーイズは日本の暴力団や中国系マフィアの怒羅権とは異なり、きちんとした組織体系を持っていない。明確な上下関係や役職もなさそうである。警察が準暴力団指定を視野に入れているのは、予算対象として都合が良いのもあるのだろう。
「同じネパール人のグループの東京ブラザーズと関係はありますか? また、ネパールジャパンユースクラブについても知っていますか?」
私はさらに尋ねた。
「これで終わり。ロイヤル蒲田ボーイズと東京ブラザーズは仲良い。2つのグループに入ったりする人間もいる。ちゃんとしたグループじゃない。ネパールジャパンユースクラブは私たちの年上のグループ。私たちの親の年のネパール人がやっている」
ロイヤル蒲田ボーイズと東京ブラザーズは交流があり繋がっている。それも、両方に所属するメンバーもいるようである。ネパールジャパンユースクラブについては、シヴァの親世代の40代から50代ぐらいのメンバーで構成されたグループという。
私の顔のすぐ横の壁に、金槌を打ち突けた
もっと話を聞きたい。私は質問を続けた。
「ネパール料理店から売上を一部もらったり、薬物売買、ドラッグなどはやったりしませんか? 日本のヤクザと会うことはありますか?」
外国人マフィアの組織的な犯罪としてイメージの強い、みかじめ料徴収、薬物の密売などをしているのかが気になるところだ。私はネパール料理店Kに行き、薬物取引の場所となっている可能性が高いと見ている。また、そうだとしたら日本の暴力団と関係性を持っているのではないか。
「終わり」
シヴァはテーブルをバンッと叩いた。明らかに怒っている。私はシヴァの圧力を受け止められず、目線を外してしまった。シヴァはいきなり立ち上がる。私は身体を強張らせた。すると、シヴァは部屋の奥の見えない場所に入っていってしまった。
そのまま座っていると、再びシヴァが現れた。右手には金槌を持っている。ネパール人女性が悲鳴をあげながら抑えようとしたが、シヴァを止めることはできなかった。次の瞬間、私は立ち上がり逃げようとした。だが、シヴァの動きは予想以上に速かった。あっという間に私の目の前まで距離を詰めてきた。金槌を振りかぶる。
私の耳元で大きな音がした。目の前には激しい怒りを露わにした表情のシヴァがいた。シヴァは私の顔のすぐ横の壁に金槌を打ち突けたのだった。私は緊張と恐怖でシヴァの右腕を抑えられなかった。
「帰ってくれ。日本人には悪いことしない」