東京のネパール人マフィアにハンマーで攻撃され、ベトナム人から「殺すぞ」と……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団」(彩図社)が話題だ。
急拡大しているその凶悪な活動実態から、彼らがアウトローの世界に身を投じることになった日本社会の事情まで、外国人マフィアの深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。(全2回の2回目/#1を読む)
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ナイジェリア人不良グループを探して
外務省の基礎データによると、ナイジェリア(ナイジェリア連邦共和国)は、アフリカ大陸の西アフリカに位置するイギリス連邦加盟国の連邦制共和国だ。人口は約2億96万人で、アフリカの約5分の1を占める人口を誇る。ハウサ、ヨルバ、イボ等の推定250の民族が暮らす多民族国家で、宗教はイスラム教、キリスト教、伝統宗教のアニミズム信仰が存在する。
英国の植民地であったが1960年の独立以降、共和制と軍事政権が繰り返されて政情は安定しなかった。汚職、民族、宗教の対立、治安情勢は不安定化。2000年代には、過激派組織“ボコ・ハラム”によるテロ行為が活発化する。2015年の大統領選挙では、汚職対策やボコ・ハラム対策をはじめとした治安対策を掲げたブハリ元国家元首が大統領に選出される。
現在、ブハリ大統領は経済発展を推進しナイジェリアはアフリカ最大の経済大国となったと言われるが、国民の大半が貧困に苦しんでいる状況がある。石油などの豊富な天然資源の利権で裕福になれたのは一部で、電気の通らないスラムで暮らす人々や、路上で生活しているストリートチルドレンも存在するのが現実だ。
そのような中で、1980年代頃から来日するナイジェリア人が現れた。2020年6月末の法務省の在留外国人統計によると、日本で暮らすナイジェリア人の人口は3262人。これは正規に在留登録している人数で、非正規滞在者、難民申請者なども含めると遥かにそれを上回る。2019年6月には、長崎県の大村入国管理センターに収容されていた40代のナイジェリア人男性が、長期勾留に抗議をするハンガーストライキの末に死亡する事件が発生している。
来日するナイジェリア人は増加していき、1990年代に入ると東京都の新宿、渋谷、六本木、上野などの繁華街でバーの店員、クラブのセキュリティ、客引きなどをしているナイジェリア人を頻繁に見かけるようになった。