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握手をした手を、そのまま私の鳩尾にぶつけてきた

 黒人はビニール袋に素早く入れる。私は1万円札1枚と1000円札2枚を出した。黒人は笑顔で受け取る。レジを通さず、レシートも出ないらしい。だが、これでは終われない。目的は取材なのだ。

「どこの国から来ました? 日本長いですか?」

 急に黒人の顔が強張った。強引に握手をされる。やたらと力強い。黒人の顔が、私の顔に近付いてくる。

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「生まれた時から日本人だー!」

 私を見つめながら大声で叫ぶ黒人。明らかに黒人は不機嫌そうだが、ここで引くわけにはいかない。

「名前は? ナイジェリアのグループのこと知りませんか?」

 私はしつこく尋ねた。すると、黒人は握手をした手を、そのまま私の鳩尾にぶつけてきた。息が止まる。

「スズキ! ありがとー! セックスしてこい!」

 黒人は私の身体を押して、店の外へ出そうとする。抵抗するが、踏み止まることはできなかった。いとも簡単に、店から追い出されてしまった。

 私はバンソンの半袖シャツが入ったビニール袋を持って、呆然とした。これでは服を買わされただけで、1万2000円を散財しただけだ。購入したバンソンの半袖シャツをインターネットで調べると、存在していないデザインであることが分かった。

アメ横(写真はイメージ) ©iStock.com

ナイジェリア人によるロマンス詐欺の手口とは?

 ナイジェリア人不良グループの実像は、いかなるものだろうか。私は雲を掴むような感覚になっていた。実態があるのか、ないのかさえ分からない。私に歌舞伎町の外国人パブで薬を盛った男や、上野で偽ブランドを買わせた黒人も、グループのことを聞いても一切答えなかった。

 押して駄目なら引いてみろだ。私は発想を転換し、ナイジェリア人不良グループではなく、被害者の側を取材しようと考えた。日本に来日して徒党を組むナイジェリア人不良グループの代表的な金儲けの手段が、日本人女性をターゲットにした詐欺である。日本人女性の恋愛感情を弄び金を騙し取る「ロマンス詐欺」と呼ばれる手口だ。