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「あなたのことは知ってる。警察か?」

 2019年8月、私は暴力事件を起こした当事者であるロイヤル蒲田ボーイズのメンバーの1人、シヴァ(仮名)と、都内某所で会っていた。面会の経緯については支障があるためここでは伏せる。

 私たち以外には誰もいない薄暗い店内。4人掛けのテーブル席で、シヴァは私に奥に座るように促した。私はシヴァと向き合うように座った。シヴァと一緒にいるのは若い美人のネパール人女性だった。私には分からない言葉でシヴァと会話をしている。

 凶暴そうな顔と筋骨隆々の身体のシヴァはロイヤル蒲田ボーイズの武闘派メンバーである。私は警視庁関係者からシヴァの身柄が釈放となったと聞いていたが、会って話を聞かせてくれるとは思わなかった。

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 目の前にいるシヴァは、頭をビール瓶で殴打し逮捕されていた男だ。場合によっては同じことが起こるかもしれない。私は額から流れてきた汗をおしぼりで拭った。シヴァが携帯を出して私を撮影する仕草をした。携帯を見ながら、ニヤけた表情をするシヴァ。シャッター音はしなかったので撮影したか定かではないが、不愉快な気分になった。

 薄暗い店内にはお香の匂いが漂い、ネパール音楽が大きな音で流れている。私は無言でじっとしていた。しばらくするとシヴァが携帯をテーブルに置き、私を凝視するように身を乗り出した。彫りの深い顔の眉間に深い溝が刻まれている。

「あなたのことは知ってる。ネパール料理店Sに来た。警察か?」

中国とインドに挟まれたネパール ©iStock.com

「日本人に手を出さないルールがある」

 私のことを警察だと勘違いしているようだ。先程撮影した写真をネパール人店員、バハドゥールに送り、私のことを確認したのだろうか。

「警察ではありません。ライターです。本を書いてます」

 私は正直に答えた。シヴァは一転、安心した表情をした。このことでシヴァが、警察をかなり警戒していることが垣間見れた。

「ロイヤル蒲田ボーイズについて知りたいです」

「少しだけ。警察は駄目だ。何もロイヤル蒲田ボーイズを分かっていない。ネパール人のグループには、日本人に手を出さないルールがある。みんな、日本で暮らすため、我慢している。日本人に悪いことはしない。約束する」

 シヴァは熱の入った口調で私に話してくれた。確かに、シヴァが起こした事件も含めて、相次ぐネパール人不良グループの暴行事件は被害者が日本人ではなくネパール人だ。

「ロイヤル蒲田ボーイズのメンバーに、明確なリーダーやトップはいるのでしょうか?」

「ちゃんとしたグループじゃない、ロイヤル蒲田ボーイズ。ネパールの友達、フレンドのグループ。年は20歳とか多い。トップとかはない。強いのと、お金あるネパール人は偉い。メンバーは200人いる。もっと増える」