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「日本人は殴ることしないから」

 シヴァはあまりにも強烈な怒りで右腕が固まってしまったらしい。金槌を握り締めた右腕を、左腕で剥がすようにして引き離した。床に金槌を放り投げ捨てた。

 私は身体の震えを隠しながら店から出た。暴力団や半グレなどのいろいろなアウトローに会ってトラブルに巻き込まれてきた私だが、ロイヤル蒲田ボーイズきっての武闘派、シヴァは想像以上の迫力と攻撃性を持ち合わせた男だった。私が日本人でなかったら、シヴァに頭を金槌で砕かれていたのかもしれない。

 後日、私はネパール料理店Sのネパール人男性店員バハドゥールのもとを訪ねた。シヴァは私のことを分かっていた。バハドゥールに確認したからとしか考えられない。そうだとすればバハドゥールが、ロイヤル蒲田ボーイズのメンバーであることが濃厚となる。

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「アハハハハ」

 私の顔を見た途端に、バハドゥールは声を出して笑った。笑いごとではないと怒りたかったが、私は黙っていた。このことにより私の疑いは確信に変わった。バハドゥールがシヴァに私のことを話したのである。

「日本人は殴ることしないから大丈夫。いつまで我慢できるか分からないけど」

 なぜか分からないが、気まずい空気ではなくなった。

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