彼の人間性を見抜けなかった
―まさに典型的なセレブですね。結婚前にデートはしたんですか?
1年弱お付き合いして、その間に妊娠がわかりました。いわばデキ婚です。子どもを産みたいという前提だったので、彼のことは「何か変だな」と思いつつも、目をつぶって結婚しました。
―夫として相容れない部分があったのですか?
元夫はDV被害者としてメディアに出たことがあって、そのとき「妻が台所のお皿を全部割って暴れた」とコメントしたそうです。実際、日常生活でもそういう話はしていました。「この風景を見ると前の妻を思い出してつらい」と言って急に泣きだしたりするんです。私はあっけにとられつつ、「残念な人に当たっちゃったね」と言って慰めるしかなかった。
―そのときは、彼のことを信じてたんですか?
信じていました。彼が噓をついてるなんて、当時は知る由もなかった。仕事柄、さまざまなタイプの患者と付き合いますので、人と接することには慣れています。だけど彼は両親が外国人で、「自分のアイデンティティはどこだ」という悩みを抱えていました。私はそれまで彼のような人とあまり接したことがなくて、日々一緒に暮らす中でも、彼の人間性を見抜けなかったんです。
―「噓をついてる」とすると、DVというのは彼の被害妄想なんでしょうか?
自分自身の思い込みを本当のことだと、記憶をすり替えてしまうんでしょう。彼自身、私にすごく攻撃を受けたという感覚は本当でしょうから。
―どういうことですか?
たとえば、トイレットペーパーが芯だけになって、そのままになってたときのこと。「切れたら自分で交換して」と言ったら顔色が変わったということがありました。あのとき、彼は、私のお願いに傷ついてしまったみたい。