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七崎 そうなんです。でも、新しい世代が入ってきたりして、それもちょっと変わり始めているかもしれない、と思います。 

 私が若い頃に初めて二丁目に行ったときは、「あんたみたいなかわいい系は、25過ぎたら需要ないよ」と言われたんですけど、今の20代にそんなことを言う人ももういなくなってきてるんじゃないかと思う。 

永田 周君も、そういうのに縛られない男の子じゃないですか。そういう役が主人公のドラマが放送されるってことは、新しい価値観がどんどん広がっているんだなと思います。 

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嫉妬心でライバルを…「ロッカー事件」の顛末

七崎 『カラフラブル』への反響で、特に印象に残ったものはありますか? 

永田 僕は、視聴者が共感しやすいのは、実は主人公の周君よりもゆうたんなんじゃないかと思ってたんです。新しい価値観を持つ人は増えてるけど、それを周君みたいにつらぬき通せる人はまだまだ多くはない。周君はある種の「スーパーヒーロー」でもあるんですね。 

 

 だから、ゆうたんに共感したって声をいただいたときは、すごく真剣に見ていただいてたんだな、と思いました。 

七崎 私がゆうたんに感じたのは、ゲイであることで学生時代にいじめられたり、アウティングをされたりとつらい思いをしたことで、そのモヤモヤを消化しきれないまま仕事をしてるのかなって。そのモヤモヤがあるせいで、必要以上に嫉妬しちゃったり、意地悪しちゃったりする。 

 主人公の周君をロッカーに閉じ込める事件を起こしてしまったのも、そのせいだろうと推測してます。 

永田 その通りだと思います。これは熊坂出監督と話し合ったんですけど、ロッカー事件に関しては、ゆうたんが普段からそういうことをしているというわけではなくて、周君という、自分と真逆の存在に出会ったときに出てしまった対応があれだった、という解釈です。 

 

 ジェンダーレスである自分を肯定できる、そして周囲にも受け入れられている周君がまぶしすぎて、「魔が差して」やってしまっているんですよね。 

ゆうたんには、自分を肯定できる出会いがなかった

七崎 永田さんから見て、ゆうたんには何が足りなかったんだと思いますか。 

永田 構図としてはすごく分かりやすくって。周君は学生時代に和子ちゃんに出会って、「変だからいいよ。それが楽しいんじゃん」という声をかけてもらえた。それがきっかけで、自分を肯定して生きていけるようになった人だと思うんです。ゆうたんには、そういう出会いがなかったんですよね。