七崎 わかる気がする。私が人生で初めてカミングアウトした相手はあさみという友人なんですけど、その時、あさみは私がこれまで経験したことに対して「辛かったよね、わかるよ」って言ってくれたんですよね。あさみが温かく受け入れてくれなかったら、今の自分はいなかったと思う。
逆に、本の中でも出てくる元カレの拓馬君っていう子は、友人にアウティングされてしまって、「普通になる」ということにすごくこだわったり、周囲をますます気にするようになったりしてしまった。
永田 なんだか、ゆうたんの境遇と重なりますね……。
七崎 そうなんです。初めてのカミングアウトで嫌な思いをしたり、アウティングされると立ち直るのに時間がかかるのかなと思います。周りの一言でその先の人生をしばらく振り回されるし、命を絶ってしまう子もいる。
少年が、自分を愛せるようになる話
永田 僕は映画をよく見るんですけど、LGBTQを取り上げる作品は少しずつ増えてはいると思うんです。ただ、そのキャラクターが「特別扱い」されていることもまだ多い。これからはコミュニティの一員として、フラットに出てくることが増えるといいのかなって思いました。
七崎 『カラフラブル』のゆうたんもそうですもんね。ゲイであることでつらい思いをしたことは彼の人格に大きな影響を与えてはいるんだけれども、彼が特段変わった人物として描かれているわけではない。
『カラフラブル』はLGTBQに限らずパワハラやエイジズムにも触れていて、コメディでありながら日常にある差別や偏見、自分たちの頭が凝り固まっているところを指摘してくれる素晴らしいドラマだったなって。そして、もちろん自分らしくいることについても伝えている。
永田 「自己肯定感」というテーマには熊坂監督が以前から興味を持っていたみたいで、撮影前に監督のワークショップに参加したときにすごく刺激を受けたんですね。ちょうどいろいろ悩んでいた時期にワークショップやこのドラマの撮影、そして七崎さんの本を読んだことが大きな一歩になったと思っています。
七崎 考えてみれば、『カラフラブル』も私の本も、自分を肯定できなかった少年が、自分を愛せるようになっていく話ですもんね。
永田 この出会いは運命だったんじゃないか、と思ってます(笑)。
七崎 たしかに、これは運命です(笑)。本日はありがとうございました!
写真=平松市聖/文藝春秋
ヘアメイク=茂手山貴子
スタイリング=東正晃
『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』は、現在Huluにて過去話とHuluオリジナルストーリーが配信中。