好評を博した吉川愛、板垣李光人主演ドラマ『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』(以下、『カラフラブル』)が先日最終回を迎えた。仕事に邁進する新米編集者・和子(わこ/吉川愛)が、メイクやファッションをジェンダーレスに楽しむ高校時代の後輩・周(めぐる/板垣李光人)と再会することから始まる同作は、自分らしさや自己肯定、多様な性のあり方を正面から取り上げている。
同作では、子ども番組のお兄さんを務めるゆうたんというキャラクターにも注目が集まった。ゲイであり、過去にアウティング(*1)されたことで心に傷を負うゆうたんは、屈託のない主人公・周に嫉妬心を燃やす。
*1……本人の許可なく、性的指向や性自認を他人に明かされること。
ゆうたんを演じた俳優の永田崇人さんは、役作りにあたって『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋、コミック版も発売中)を手に取ったという。今回は、そんな永田さんと『僕が夫に出会うまで』著者・七崎良輔さんの対談が実現した。
◆ ◆ ◆
「自分のことが」…『カラフラブル』の台本に書いたこと
七崎 『カラフラブル』、すごくコミカルでありながらじんとくる作品で、とってもおもしろかったです。ゆうたんは、他の人に嫉妬しちゃうところも含めて、若い頃の私みたいだった!
永田 えーっ、それなら大成功ですね。役作りするにあたって、七崎さんの本を教科書のようにして読んでいたので。
七崎 そもそも、私の本はどんなきっかけで読んでくださったんですか?
永田 当事者の方が書いたものをきちんと読んでおきたいという気持ちがあったんです。それで、渋谷の本屋さんに探しにいったときに、表紙に惹かれて手に取りました。
七崎 演じるにあたって、責任感を感じていたんですね。そこで私の本を選んでくれたということが、すごく嬉しい。
永田 ゆうたんのキャラクターを作るうえで、まんま参考にさせてもらったエピソードがあるぐらいの勢いです。たとえば、七崎さんがクリスマスにセーラームーンのおもちゃが欲しかったんだけど、トランシーバーセットを贈られてしまうエピソード……
七崎 小学生の頃のエピソードですね。当時すでに「男の子がセーラームーン好きなのはおかしい」という空気を感じていたので、親に本心を打ち明けなかったんですけど、サンタさんは分かってくれているだろうと思っていたから、当日親が用意したプレゼントに落ち込んで。でもそれを悟られちゃいけないと思って、一生懸命喜んでいるふりをしたという……切ない思い出です。
永田 僕は芝居をするときに、台本に書いていない設定も考えたいタイプなんですけど、クリスマスのエピソードは、ゆうたんが幼い頃に経験したエピソードとしてそのままお借りしました。
七崎さんの本の中ではいじめをはじめとした理不尽な出来事がたくさん出てきますけど、それにも関わらず、「自分のことが嫌いだったことが、一番つらかった」と書いていたのがすごく心に響いて。この言葉は、台本にも大きい字で書いていました。ゆうたんというキャラクターの核心を一番ついていると思ったんです。
七崎 改めて、永田さんが見た「ゆうたん」とはどんな人物だったのかを聞きたいです。