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“自分をつらぬき通せる人はまだ少ないけど…”『カラフラブル』俳優がゲイの青年を演じて共感したこと

俳優・永田崇人さん×作家・七崎良輔さん対談

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「自分を肯定できない」という弱さに共感した

永田 やっぱり、自分のことが好きになれないことに、なによりも苦しんでいる。だからこそ、常に人と比べて優劣をつけてしまう人なんだと思います。ゆうたんはすごく嫌なやつに見えるけど、その言動の背景にあるのは、多くの人が持っている「自分を肯定できない」という弱さなんです。 

七崎 誰にでもありますもんね。誰かに承認されたいという欲求だとか、SNSの批判的なコメントへの怒りとか……(笑)。永田さんにも、ゆうたんと似ているところはあるんですか。 

 

永田 たくさんありますよ。やらないようにしようとは思うんですけど、やっぱり他人と自分を比べちゃうことはあります。だから、ゆうたんのセリフの中でも、まるでセリフじゃない、自分の本音かのように感じられる部分もあったり。 

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 あと、これはゆうたんというよりはささめ君(*2)と似ている点ですが、身長が低くて中性的な顔立ちだからか、「ないものねだり」で男らしいものに憧れる傾向がちょっとある。 

*2……ドラマ中盤で芸能活動を始める主人公・周とユニットを組むキャラクター。可愛らしい外見のため“ジェンダーレス男子”として売り出されるが、実は「男らしさ」への強い憧れを持つ。 

「俺、男らしくしようとしてるな」と感じる瞬間

七崎 どういうときに「俺、ちょっと男らしくしようとしてるな」って感じるんですか? 

永田 髪をセットしないときとか、ひげを剃らないときとかですかね(笑)。髪ボサボサのまま外に出れるほうがいいでしょとか、オシャレはしたいんだけど、オシャレしすぎるのはカッコ悪いでしょとか、考えちゃいます。 

 

 七崎さんの本の中でも、「男らしさ」の話がたくさん出てきますよね。 

七崎 本にも書いた通り、私はむしろ、「男らしくしろ」と言われることがつらかったタイプ。父が体育会系だったので、「男なんだから前髪伸ばしてかっこつけるな。男はスポーツ刈りだ」と理容室に行かされて、前髪を1ミリだけ切りました(笑)。 

 大人になると、今度は逆にゲイの世界でも「男らしさ」の壁にぶつかって。ゲイの世界って、「男らしいほうがモテる」というヒエラルキーがあるんですよ。 

永田 そうなんですか!