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目立ちたがり屋ともいえる行動

 与正氏は生来、目立つことが好きなようだ。与正氏の服装は、他の北朝鮮女性とは全く異なる。一般庶民は、お金を節約し、あるいは働くことの邪魔にならないよう、髪はひっつめるか強いパーマをあてる。服装も味気ない作業着のような上下で、平壌市に住む人々はいくらかマシだが、原色が強調されたような安価な服を身にまとうことが多い。そうでなければ、伝統的なチマ・チョゴリ姿だ。与正氏の場合、公の場に出てくるときは、ほとんどが膝上のスカートスーツ姿だ。紺やグレーの落ち着いた色合いが多い。日本政府関係者の一人は、「おそらく、すべてオーダーメード。膝上スカートにこだわりがあるみたいだし、目立つことが好きなんだなあという印象だ」と語る。


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 実際、北朝鮮当局者らは中国などで接触した情報関係筋に対し、「与正氏がやたら目立ちたがって困る」とこぼしている。18年6月のシンガポールでの米朝首脳会談では、与正氏が金正恩氏に共同声明にサインするペンを手渡した。正恩氏が外国首脳との式典で花束を受け取るとそれを預かる役もこなした。最近も20年5月1日にあった平安南道の順川リン酸肥料工場竣工式で正恩氏にテープカット用のハサミを手渡した。7月26日には、「朝鮮戦争勝利67周年」を記念して、軍主要指揮官への「白頭山」記念拳銃授与式が、平壌の党中央委員会本部庁舎で行われた。与正氏はやはり、正恩氏が自分の名前を刻んだ拳銃を指揮官一人一人に手渡す際、あらかじめ拳銃を載せた黒いお盆をもって、正恩氏を手伝った。

 元々、こうした場面に出くわした米国や韓国の政府関係者らは「こんな仕事、普通は課長以下の仕事だろう」と驚いていたが、北朝鮮当局者らも同じ思いを抱いていたらしい。「花束を受け取る係や拳銃を準備する係の人間がいないわけではない。仕事を盗られた人間の身にもなってみろ」と嘆いた北朝鮮当局者もいたという。

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「目立ちたがり屋」とも言える与正氏の行動にはそれなりの理由がある。

男尊女卑社会へのレジスタンス

 金正日総書記と高英姫氏との間に生まれた金正哲、金正恩、金与正の三兄妹のうち、「与正氏が最も聡明で知的である」という評判だった。金正日総書記は1990年代末には、正哲氏と正恩氏の兄弟どちらかを後継者にすることを考えていた。しかし正哲氏は政治に全く関心を示さず、音楽や芸能にばかり夢中になった。かつて英国駐在北朝鮮公使を務め、2016年8月に韓国に亡命した太永浩氏によれば、正哲氏は15年春、エリック・クラプトンの公演を楽しむため、英国を訪れた。正哲氏は、英国の政治や歴史に一切関心を示さなかったという。金正日総書記は消去法で正恩氏を後継者にしたが、粗暴な性格を嫌ってもいたようだ。