ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平の快進撃が止まらない。二刀流どころか、盗塁やセフティバントで足の速さを見せつけたと思えば、外野の守備もこなし、投・打・走・守の“四刀流”をいかんなく発揮している。日本球界関係者はそんな大谷を「漫画の世界」と半ばあきれ気味に語り、米国のTV解説者は「彼は日本人じゃない。宇宙人だ」と遂に未確認生命体呼ばわり。大谷はそれだけ傑出した選手といえる。

オールスターのホームラン競争にも出場予定の大谷翔平 ©時事通信社

逸材が揃い踏みした94年生まれのアスリートたち

 大谷がメジャーに移籍し、羽生結弦が平昌五輪で2度目の金メダルを獲得した2018年春、彼らの誕生年である94年度生まれのアスリート特集が組まれたことがある。水泳の萩野公介、瀬戸大也、バドミントンの桃田賢斗、奥原希望、スピードスケートの高木美帆、レスリングの川井梨紗子、土性沙羅、柔道のベイカー茉秋、野球では藤浪晋太郎、鈴木誠也、サッカーの浅野拓磨や南野拓実など、各競技を代表するような逸材が揃い踏みしたからだ。

 彼らは当時、「ゆとり教育」の産物として語られることが多かったが、果たしてそれだけのくくりで捉えていいのかとちょっとした違和感があった。

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羽生結弦 ©文藝春秋

 これまでも同学年が活躍する世代のくくりはあった。80年度生まれの「松坂世代」、79年度生まれの「黄金世代」など。いずれも野球やサッカーという一競技に限った現象だったが、94年組は競技が多岐にわたっているところが新しい。

 そもそもなぜ、ある年代に集中して選手が活躍する現象が生まれるのか。それは、教育現場や労働経済学の分野で度々論じられる「ピア効果」ともいえる。ピアとは仲間や同級生などの意味で、意識や能力の高い集団の中に身を置くことで切磋琢磨し、お互いを高め合う効果のことをいう。簡単に言うなら、身近にいる能力や意識の高い人に刺激を受けて、自分も頑張ろうというモチベーションが湧く現象だ。松坂世代や黄金世代はまさにピア効果と言ってもいい。