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2021/06/22

94年組が松坂世代やサッカー黄金世代と異なる理由

 特に松坂世代の結束は強かった。何度かシーズンオフの同窓会に参加させてもらったことがあるが、毎年30~40人ぐらいの選手がチームを超え集合し、「来シーズンこそお前に負けない」とお互いに刺激し合っている姿は壮観だった。

 競技が多岐に渡る94年組にもピア効果が現れているのは、黄金世代にも松坂世代にもなかったSNSのお陰ともいえる。お互いのSNSをフォローしながら現状を知り、自分のモチベーションに取り込んでいる。違う競技でも身近な良きライバルと捉え、SNSで互いに励ましたり祝福したりしているのが94年組の特徴ともいえる。

瀬戸大也と萩野公介(2016年リオ五輪) ©JMPA

 また、世代のベンチマークにできる羽生と大谷という実力、人気ともに突出した選手が2人いるというのも大きな刺激になる。

 松坂世代は、松坂大輔に追いつけ追い越せと切磋し合っていたが、毎日ニュースになるような選手が2人いれば、どうしたって日々自分に喝を入れざるを得なくなる。

大谷はかつて「僕らは羽生世代」と言い切った

 大谷はかつて「僕らは羽生世代」と言い切ったことがあった。19歳で出場したソチ五輪で金メダルを獲得した羽生の活躍は、それだけ同年代選手を刺激した。2年後のリオデジャネイロ五輪では萩野、土性、川井、ベイカーらが金メダルを獲得、その翌年の世界選手権で奥原希望は女子シングルスで日本人初の金メダル、桃田は出場停止処分や事故などのアクシデントを経験しながらも世界ランキング1位を保持している。またスピードスケートの高木美帆は、平昌五輪で日本人冬季五輪初となる金・銀・銅メダルをコンプリート。そして今、大谷の規格外の活躍で、94年組はますます実力を蓄えているように見える。

奥原希望 ©JMPA

 彼らをゆとり教育の産物としてひとくくりにするのには違和感があるものの、ゆとり教育の恩恵を受けているのは紛れもない事実。それまでの詰め込み教育を見直すことによって、個人の尊厳を尊重し、子供のころから好きなことに取り組み、主体的に考え、自ら学ぶ人間に育てることを主眼に置いたゆとり教育は、02年度から10年度に実施された。94年度生まれはそのど真ん中の世代。しかも彼らが小学2年生の時に、それまで隔週だった休みが完全週休2日へ移行になった。これが彼ら世代の大きなターニングポイントになったのではないか。

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