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《直木賞候補作インタビュー》「大きな力こぶは見せられたんじゃないか(笑)」呉勝浩が三つの次代を通して描く“歴史の継承”

『おれたちの歌をうたえ』

書きたかったのは“先行世代からの継承”

 高校時代、彼らはある凄惨な事件に遭遇し、苦い別れを経験する。しかし約半世紀後、暗号に導かれるように、当時わからなかった事件の真相が明らかになっていく。魅力的な謎が用意される一方、久則と茂田をはじめ、年代が異なる人物の交流やそのときの風俗が三つの時代で鮮やかに描かれ、色んな世代の読者が感情移入できるようになっている。そして衝撃のラストのゆくえは――。

「この作品で書きたかったことのひとつが、“先行世代からの継承”です。先輩から後輩に受け継がれるものって、決して良いことだけでなく、負の側面も必ずある。同時に、豊かさや知恵も含んでいるはずです。現代パートでコンビを組む久則と茂田は約30、歳が離れていて、分かり合えない部分も多くあります。そんな二人が偶然の交流を通じ、互いに与え、受け取り合う。もしかすると、そうした“つながり”の中にこそ希望はあるのかもしれない。自分なりに抱いていた想いを、ラストでは表現できたのかなと思っています」

ごかつひろ 1981年生まれ。2015年『道徳の時間』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。20年『スワン』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞を受賞。

おれたちの歌をうたえ

呉 勝浩

文藝春秋

2021年2月10日 発売

《直木賞候補作インタビュー》「大きな力こぶは見せられたんじゃないか(笑)」呉勝浩が三つの次代を通して描く“歴史の継承”

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