加盟社による記事の「足し引き」は自由だが…
では逆に四国新聞にあって日刊スポーツにない部分を抜き出してみよう。すると、
・平井氏は「誰も企業名を言っていない。意図的に誤解を与えるもの」とし、「異例中の異例で(オリジナル)音声データの公開を検討している」と述べた。
この部分が四国新聞にはあった。つまり平井大臣の“主張”を細かく載せていることがわかる。
こうした「足し引き」記事はどう考えればよいのか?
調べてみると、前提として共同通信と加盟社(地方紙など)の間の取り決めは、原則足し引き自由とされているという。ただ、「足す」という作業は、地域につなげる場合、または、より詳しくするという目的以外には想定されていないという。
たとえば共同の記事を受けて「香川県では」と記事を足すのは一般的だが、特定の人物のために文章を足したり引いたりするのは珍しいケースのようだ。地方紙は文字通り地元の読者のためにある。足し引き自由だからこそ、配信された側が何をどういじるのかが問われるのではないか。
これではただのワニ新聞である
もちろん地方紙側も紙面のスペースや文字量の都合で共同の記事をカットすることもよくある。しかし今回の場合、同じ共同の記事なのに四国新聞は平井大臣にはネガティブな表現部分は絶妙にカットして、平井氏の主張部分を多く載せていることがわかる。「地域」以外のために記事を足し引きするのは疑問だ。
私は新聞には論調の違いがあり、偏りがあるのは当然と考えている。だからこそ新聞読み比べは楽しいと思っている。
ただ今回のケースはどうなのだろう。メディアのオーナー一族から政治家を出すのは出馬の自由があるからいいとしても、その親族の政治家を紙面でプッシュしたり擁護しているようにしか読めないものを発行しているなら話は別だ。これではただのワニ新聞である。
年内には衆議院選挙がある。一体どんな“報道”が香川では今後繰り広げられるのか。私はワニ大臣とその周辺をしばらくウォッチしていきたいと思う。