「こんないやらしい漫画を借りて読んでるなんて、お母さんガッカリだわ。軽蔑する」

 私がまだ7歳くらいの頃だったか、母親から冷たく吐き捨てるように言われたことがショックで、今でもはっきり覚えている。事の発端は、同じマンションに住んでいる一つ年上の幼馴染の女の子が「この漫画、お母さんと一緒に読んでるんだけど面白いから読んでみてよ」と言って、その漫画を20冊ほどまとめて貸してくれたことだった。

おそらく成人女性向けのものだったが……

 幼馴染の一家とはほとんど家族ぐるみ(双方の父親は除く)の付き合いで、母親同士が仲良くなったことにくわえ、兄と私、そしてその家庭の姉弟がそれぞれ同い年だったことから、当時はよく交流があった。

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 件の漫画はおそらく成人女性向けのものだったが、直接的な性行為などの描写はなく、あっても「同じ布団に男女が寝そべって話している様子」やキスシーンくらいのものだったと記憶している。残念ながら、まだ幼かった私にはあまり興味が持てる内容でもなく、1冊だけ読んで、あとは紙袋から出さず、読まないでいた。

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 そんなときに、母親から突然「あんた、何この漫画?」と聞かれ、冒頭に書いた通り、罵倒されるに至ったのだ。幼馴染が漫画を貸してくれたとき、母親はその場に居合わせていたので、私から「貸してほしい」とねだったわけでも、母に隠れて借りてきたわけではないことも、すべて知っていたはずだった。だからこそ、余計にショックだったのかもしれない。

子を「支配」する母親

 私自身は好んで使わない言葉だけれど、母親はいわゆる「毒親」と呼ばれる親なのだと思う。精神的に不安定で、ふとしたきっかけで機嫌を損ねると、私や兄をよく叩いた。私にとって、鬼のような形相で怒鳴り、手をあげる母親は「恐怖」そのもので、とにかく母親の機嫌を損ねないよう、いつも神経を尖らせて顔色をうかがいながら子ども時代を過ごした。

 母親は貧困家庭出身で、父親から虐待を受けて育ったという。彼女自身も父親から男性との交際を厳しく制限され、結婚も猛反対する父親から逃げるように済ませていたためか、自分の子ども、特に女である私に対しても似たような態度をとることがよくあった。

 特に私が中学生、高校生になって身体的に成熟する頃、母親は私に対してしばしば拒絶反応を示すようになった。母親はこれまでも私のやることなすことをとにかく否定するタチで、例えば小学生の頃に書いた読書感想文を「あんたは文章が下手、センスがない」と一蹴したり、私が生まれたことについて「作る気なんてなかったのにできた」と言ったりすることがあった。しかし、私が年頃になって性に関心を持つことや、異性との交友関係に関しては、これまで以上に拒絶反応を示し、否定的な態度を貫いていたように思える。