20歳でマルチ商法を始め、最年少でゴールドランクに昇格し、7桁の月収を実現した西尾潤さん。実体験をもとに「マルチ商法」にハマった女性の“乱高下人生”を、小説『マルチの子』でリアルに描いた。マルチ商法の光と闇について、西尾さんに聞いた。(全2回の1回目。後編を読む)

西尾潤さん

バイト先の先輩から「20歳になったら紹介したるわ」と

──『マルチの子』は実体験を元に描かれたと伺いました。どこまで「リアル」なんですか?

西尾潤さん(以下、西尾) モデルにした人物は多いですね。セミナーやスポンサリングの様子などは、現在のマルチ商法を取材して自分の体験とミックスしました。最年少の20歳でゴールド保持者になって月収150万円を得ていたことや、22歳で借金を抱えたのは、全部実話です。付け加えると、作中の真瑠子の借金は400万円。でも実際の私は700万円ありました。

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──そうなんですね。聞きたいことが多すぎるので順番にお尋ねします。そもそも、なぜマルチ商法をやろうと思われたのですか。

西尾 バイト先の先輩に教えてもらったのがきっかけです。

 私、高校時代は軽音部に入っていたんですよ。高校卒業後にデザイン事務所に就職したんですけど、何を血迷ったのか「ロックで食べていく」と1年で会社を辞めてバンド活動をしていた時期がありまして。当然食べていけず、生活のために外資系会社の営業アルバイトをしていたんですが、そこで出会ったFさんが、「めっちゃすごいビジネスの話がある」と教えてくれたのがマルチ商法といわれるネットワークビジネスでした。

──ネットワークビジネスって、いわゆるねずみ講のことですよね。

西尾 作中でも書いてますが、ねずみ講とマルチはまったく違うものです。マルチはマルチ・レベル・マーケティング(MLM)の略です。ネットワークビジネスとも呼ばれていて、昔から欧米諸国などで活用されている流通形態で……あ、スイッチ入って来た。私これ、延々と説明できますけど、続けていいですか(笑)。

──ぜひ教えてください(笑)。

西尾 ねずみ講は商品などの流通がなく、お金だけが流通する「無限連鎖講」という違法な仕組みです。それに対しネットワークビジネスは、商品がきちんと流通する「連鎖販売取引」という合法的な仕組みです。

 

 私がやっていたのは違法のねずみ講ではなく、合法のマルチ・レベル・マーケティングでした。ここ大事なんで書いておいてください(笑)。

 Fさんは当時20代後半で、バイトの他に業界最大手のネットワークビジネスをやっていた人でした。ある程度成功していたようなんですが、「今やっているビジネスではこれ以上儲からない。それより今、めっちゃすごい話が来てるんやけど、20歳にならないとできないから、西尾ちゃんが20歳になったら紹介したるわ」と言われて、すごく興味を持ったんです。