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漫画家同士で漫画のこと話しちゃダメ

――なのに、誰も漫画の話をしない(笑)。

(A) それで業を煮やしたつのだ氏は、僕らに決闘状みたいな巻物の手紙をよこしました(笑)。達筆でね。君たちは映画の話ばかりで堕落している、と。それで藤本氏にうまいこと返事書けよって頼んだら、「漫画は自分で考えるものだから、漫画家同士で漫画のこと話しちゃダメだ」とかなんとか書いてくれて。つのだ氏は納得してくれました。

――(A)先生とF先生(藤子・F・不二雄/藤本弘)との間でも、漫画の話はされなかったんですか?

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(A) はい。お互いの作品を読んですごいとは思っても、それ以上、どうのこうのと論じ合ったりはしませんでした。もしそんなことをしていたら、早々にコンビを解消していたと思います。

「黒い藤子」「白い藤子」

――お二人は、絵も作風もまったく違いますしね。

(A) 最初のころは合作してたんですけど、だんだん絵柄が違ってきちゃう。いちばん違うのは線なんですよ。藤本氏はソフトできれいな、やさしい線を描く。僕は筆圧が強いから、勢いよく描いて太い線になる。ベタに関しても、僕はベタがわりと好きなので、原稿が真っ黒け。でも藤本氏はほとんどベタがない。原稿が白っぽい。当時の読者は「どうも、二人が別々に描いているらしい」と気づいていて、原稿の色味から「黒い藤子」「白い藤子」なんて言われてました。

――先日、デジタルリマスター版が公開された映画『トキワ荘の青春』の主人公は、本木雅弘さんが演じるテラさん(寺田ヒロオ)です。A先生から見て、テラさんはどんな方でしたか。

(A) まだトキワ荘に引っ越す前、手塚先生に会いにトキワ荘を訪ねたら、先生が留守だったんです。その時、先生の部屋の向かいの部屋に住んでいたのがテラさん。すぐ仲良くなり、僕らが引っ越してからもずっと世話を焼いてくれました。当時は僕らよりテラさんのほうが仕事はあったけど、そこまで爆発的に売れていたわけじゃない。なのに、何かと面倒を見てくれる不思議な人でしたね。