4月23日、政府は3度目の緊急事態宣言を発令し、去年の延期に続き、今年すでに公開し、爆発的なスタートを切っていたコナン映画もその影響を受けることになった。
神奈川の子どもたちはコナンの最新映画が見られるのに、映画館休業要請が出た東京の子どもは見られない、という状況が生まれてしまうわけだ。正直言って、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』であれほどの観客が動いてもクラスタが発生しなかったにも関わらず、東京大阪などで映画館が休業要請対象になったことはあまりに理不尽だと言わざるをえない。
新型感染症の影響もさることながら、『名探偵コナン』というコンテンツはその成功にも関わらず、いまだ批評家から過小評価され、正当な評価を受けていないと感じることがある。
最新劇場映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』が過去最高のスタートを切り、今年こそ100億突破かと各メディアが書き立てた中でこんなことを書くのはおかしいかもしれない。だが僕は、なぜ多くの人気作の中で、『名探偵コナン』シリーズがこれほど長期に、しかも20年目以降さらに人気が上がるという常識外のコンテンツになったのか、批評家たちは分析しかねているように見える。
「毎年1億ドル」を稼ぐアニメ映画シリーズ
2018年のゴールデンウィークに『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』が公開された時、ある映画評論家は「『コナン』に恨みは一切ないけど、さすがに3週目『コナン』に『アベンジャーズ』新作の初週が動員ランキングで負けるのは見たくない」とツイートし、それと前後して「数年単位でドラマの世界を追っていくという世界の観客のスタンダードがまだ日本の観客にはできあがっていない」と書いた。
それは暗に、その映画評論家が当時すでに20年を越えた『名探偵コナン』シリーズをMCU、マーベルシネマティックユニバースに対置する価値のあるものと見なしていないというニュアンスに満ちていた。
その評論家だけではない。宮崎駿や新海誠、細田守といったカリスマ監督たちの新作が公開されるたびに名高い批評家たちが多くの批評や考察を書く。『鬼滅の刃』の興行収入が『千と千尋の神隠し』を越えて400億に迫ることや、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で庵野秀明が個人史とも言える作品を完結させたことも社会的に論じられた。そうした作家性の強いアニメ作品に対して、『名探偵コナン』はどこかルーティンなものと批評家にみなされている雰囲気がある。
だがそうではない。『名探偵コナン』シリーズ2018年の『ゼロの執行人』の世界全体での興行収入は110億円、1億ドルを突破したことが公式発表されている。日本国内でそれを越え、中国映画市場で30億円を叩き出した2019年の『紺青の拳』も恐らく世界興収1億ドルを越えているだろう。日本映画界は「毎年1億ドル」というとてつもないシリーズコンテンツを手にしていることになる。