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王道すぎて過小評価気味? “化け物級”コンテンツ「名探偵コナン」の底知れぬスゴさ

緊急事態宣言下でも人気は揺るぎない

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2021/04/25
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コナン君が大活躍している学習参考書

 国民的アニメとして知られる『ドラえもん』の劇場版も『STAND BY MEドラえもん』の83・8億円を頂点にして毎年30億〜50億の興行収入だったし、世界的コンテンツとして知られるポケモンの劇場映画シリーズの国内興行収入もほぼ同様だ。かつて「松竹映画のドル箱」と言われた、山田洋次監督と渥美清の『男はつらいよ』の平均的な観客動員150万人を、コナン最新作は金土日の公開3日間で稼いでしまうのだ。

 いまだかつて、これほど「爆発力と持久力」を両立した怪物シリーズ作品を日本映画界が作り出したことはない。世界的に見ても、毎年1億ドルを稼ぐアニメ映画シリーズなど稀である。

 多くの人気アニメがひしめく中、なぜ『名探偵コナン』シリーズがこれほどの存在に成長したのかは多くの複合的な要因があるだろう。だが、書店で低年齢向け学習参考書のコーナーに足を運べば、『名探偵コナン』シリーズが日本においてどういう存在になっているか、その一端が低年齢の子供を持たない大人にも分かるかもしれない。

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 小学館から発行されている『日本史探偵コナン』シリーズは、おそらく大型書店なら学習コーナーの一番目立つところに平積みになっているだろう。主人公のコナン君が日本の過去と通信し解説するという形式の学習漫画は2017年の刊行開始以降大ヒットを記録し、『日本史探偵コナンシーズン2』『世界史探偵コナン』『日本史探偵コナン外伝アナザー』などの派生スピンオフシリーズを生み、シリーズ累計は200万部にものぼるという。

 それだけではない。『名探偵コナンの12才までに覚えたい英単語1200』『名探偵コナンの12才までに身につけたい本物の漢字力1026字』『名探偵コナンの10才までに覚えたい難しいことば1000』『名探偵コナン理科ファイル』『ニュース探偵コナン』『名探偵コナンKODOMO時事ワード2021』……低年齢向けの学習参考書は今、コナン君が大活躍しているのである。

 もちろん小学館といえば学習雑誌の老舗であり、ドラえもんの時代から人気コミックとのコラボはお手のものだ。しかし『コナンで学習』シリーズが爆発的な成功とともに書店を埋め尽くしつつあるのは、単に人気の量だけではなく、江戸川コナンという「考える主人公」と学習コミックとの相性が抜群であることも大きいと思う。

『コナン』は知識の宝庫である

 学習コミックシリーズだけではない。もはや99巻まで達した原作の『名探偵コナン』を改めて読み返すと、少年サンデーに連載された純然たるエンタメ少年漫画でありながら、『コナン』は知識の宝庫であることに気づくのだ。『コナン』を読まない、映画をチラ見くらいしかしない評論家たちは、毎回どこかの洋館で老人がナイフで殺された事件を解決するようなアナクロなイメージを持っているのかもしれないが、実際のコミックははるかに多様だ。