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2021/06/25

 一方、40~50代の女性たちはフェミニズムから距離を置こうとしてきました。この世代は、私たち世代のフェミニストがテレビ番組などで猛バッシングされる後ろ姿を見て育った世代。女性学研究者の田嶋陽子さんがテレビで男女間の差別に対して闘う姿をいじられたり、叩かれたりするのを見て「これはソンだな。やめておこう」と、いわゆる“わきまえる女”になってしまったのでしょう。

女子学生の後ろに母親という「背後霊」を感じる

 ですが、平等意識の強い若い女たちを育てたのはその40~50代の女たちです。彼女たちは自分が苦労した分、「娘には望む教育を」と期待をかけ、自分のような生き方をしてほしくないと考えました。わきまえる女たちの恨みつらみ、怒りが次世代に伝わっていると感じます。

 私はいつも東京大学に入ってくる学生、特に女子学生の後ろに、母親という背後霊を感じます。女子の高学歴は二世代がかり。昔は「女の子に学歴はいらない」と考える親が多かったですからね。とは言え、女の子たちがここまで変化した最大の理由は、私は少子化だと考えています。子どもの数が少なくなり、息子と娘の間で教育費の傾斜配分をしなくて済むようになったのです。

2019年東大入学式の祝辞で、日本社会にも東大にもいまだ男女差別があると言及 (c)共同通信イメージズ

 今、フェミニズムがかつてなく上げ潮になっています。でも難しく考えないでほしいですね。フェミニストと名乗るのは自己申告でいいんです。情けないことに、今だに世の中にはリトマス試験紙になるような出来事がいっぱいあります。森喜朗元首相の女性蔑視発言にムカつくかムカつかないか。そういう一つ一つにどう反応するか。その積み重ねがフェミニズムなのです。

text:Miho Katsuki

※このインタビューの完全版は、発売中の「週刊文春WOMAN vol.10(2021年夏号)」に掲載しています。「嫁もおひとりさまも救った介護保険制度が、今いかに崖っぷちにあるか」という“在宅ひとり死”の危機から、「2019年の東大入学式祝辞と“オッサンの再生産”」という日本のエリート男子を取り巻くホモソーシャル問題まで、舌鋒鋭く語られます。

 また、「週刊文春WOMAN vol.10(2021年夏号)」の「ジェンダー&フェミニズム」特集では、ブレイディみかこ、井手上漠のインタビューから、松田青子、鴻巣友季子などによるブックガイド企画、雲田はるこ×紗久楽さわのBL対談まで、70ページ以上にわたって掲載しています。

Chizuko Ueno 1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。77年、京都大学大学院社会学博士課程修了。社会学博士。『セクシィ・ギャルの大研究』『スカートの下の劇場』『家父長制と資本制』『近代家族の成立と終焉』『ナショナリズムとジェンダー』『差異の政治学』など著書多数。

在宅ひとり死のススメ (文春新書 1295)

上野 千鶴子

文藝春秋

2021年1月20日 発売

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