今でも忘れられない先輩による感動のステージ
松本さんは、人気AV女優でストリッパーの川上奈々美さんのストリップを見たときの感動が今も忘れられないという。松本さんにとって川上さんは、何でも相談できる事務所の先輩でもあるが、ステージ上では全く別人となっていたからだ。
「舞台上で見た川上さんは、『なんでそこまで悲しい表情できるの?』と思うぐらい役に入り込んでいたんです。女優さんのようですごいと思いました。そんな先輩の姿を見て、憧れてストリッパーになりたいと思う後輩も増えています。ストリップを一緒に見た同じ事務所の後輩も、やってみたいって言っていましたね。AV女優ではなくて、私がたとえ普通のOLだったとしても、人生の中でストリップは一度はやっていたと思います」
そんなストリップに対して熱い思いを持つ松本さんが今回の浅草で目指すのは、お客さんの心を掴むステージだ。
「お客さんの心をめちゃめちゃ揺さぶりたい」
「ストリップを初めて見たときにグッときて心が浄化されるというか、感動があった。今度は自分が舞台に立つ側になるんですけど、お客さんの心をめちゃめちゃ揺さぶりたいと思います」
松本さんは、そういうとまっすぐな視線で私を見つめた。目の前の松本さんは、どんな質問にも丁寧に答えてくれる真面目で前向きな女性だ。
彼女の汗の結晶とも言える浅草の7月公演のタイトル名は、『祭音 ZAION』。きっとタイトル通り、夏らしさを前面に出したパワフルな公演になるに違いない。ストリップ劇場もコロナ禍において、大きな打撃を受けていると聞く。彼女の浅草に賭ける意気込みを聞きながら、ストリップ劇場はもちろん、疲弊し低迷した日本社会が本公演によって少しでも元気になればいいと思った。ストリップは、そんな魔法を持っているエンタメだからだ。
松本さんが浅草の舞台でスポットライトを一身に浴びて、どんな変化を遂げるのか。私たちにどんな心揺さぶるステージを見せてくれるのか。そして浅草にどんな新しい轟が鳴り響くのか。まだ見ぬ7月のステージが待ち遠しく、今から胸がときめく自分がいた。
撮影=石川啓二/文藝春秋
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