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モウモウと鳴く牛が額を撃たれてからきれいに切り分けられて…1時間で300頭、“動物”が“肉”になる瞬間を徹底ルポ

モウモウと鳴く牛が額を撃たれてからきれいに切り分けられて…1時間で300頭、“動物”が“肉”になる瞬間を徹底ルポ

『世界屠畜紀行』より #2

2021/08/07
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 ミシシッピーより東というのは、南北戦争のときの「北部」のこと。つまり北部の気取った連中の考えてることまではわからんということだ。へぇー、さすがキャトルキングダム。牛によって富を築いてきた土地なのだなあ。

肉がどうやってできるのか、想像させない世の中

 ところで長時間に亘る見学とインタビューの間、お母さんとエミリー(編集部注:ジョーの家族)はどうしていたのかというと、放血シーン以外はどこの工程でも質問したり、熱心に話を聴き、積極的に見学に参加していた。これまでの各国取材でもはじめてのこと。男性通訳すらビビって逃げ出したり吐きそうになったりするんだから。「怖くなかった?」とたずねると、お母さんは6歳のときに、学校の授業で屠畜場に見学に来たことがあると言う。たった6歳で一部始終を見たと!! お母さん、そこだけに限ってはアラブ社会に同化できる素質あるよ。

 さすがに今は、いくらテキサスでも小学生の見学はないらしい。動物愛護運動の賜物である。小学校教師のエミリーは、まだよくわからない子どもにいきなり全部を見せるのはむずかしいと言う。「自分が授業でやるなら、まずは話からね」とも言っていた。世の中全体が日常生活で肉がどうやってできるのかを想像させないようにしてしまっているのだから、いきなり見せるのは確かにむずかしくなっている。

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