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 休憩室に戻ってから、ローレンスに聞いてみたかったことをいくつかぶつけてみた。

 まずトレーサビリティの問題について。

「今の時点では、屠畜場はどの牛がどこのフィードラット(肥育場)から来たのか、そしてフィードラットは、どの牛がどのランチ(牧場)から来たのかは把握しているものの、両者の情報がつながっていないんです。すべての情報をつなげて個体情報管理ができるようにするための計画が、NAIS(National Animal Identification System)です。ただそれが完全に作動するまでに、あと2年くらいかかるんじゃないでしょうか。なにしろランチの経営者たちがとても頑固ですから」

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 アメリカ政府は、全家畜のIDシステムを2008年から導入すると発表。日本とは牛の数もケタ違いだから時間がかかるんだろうか。ココがしっかりしてくれないと、BSE感染牛が出たときに履歴をトレースすることもできないんだよね。

写真はイメージです ©iStock.com

「家畜をつぶして肉にするのはいいことなのに」

 2番目に、気になる動物愛護団体からのクレームについて。

「どのように家畜を扱うかの規則がいろいろあります。牛に残酷な扱いをしていないかどうか、バーガーキングなどのファストフード産業が、よくチェックに来てますよ」

 ローレンスさん個人としてはどう思うのか、重ねて聞いてみた。

「PETA(People for the Ethical Treatment of Animals/動物愛護団体のひとつ)の人たちは、肉を食べなければそれで家畜の命を救っているんだと思ってる。動物は、肉を食べるだけじゃなくて、石鹸や化粧品、フィルムの原材料にもなってる。自分たちの生活に必要なさまざまなものになってるんだ。それがまったくわかっていない」(実際にはPETAは肉だけでなく化粧品、フィルム、革製品、動物由来の製品すべてを使わずに生活するべく運動している)。

 ローレンスは、静かに、けれどもきっぱりとした口調で言う。日本では歴史的に長らく肉食を表向き禁じられてきたため、屠畜業に対する偏見が非常に強いことをジョー(編集部注:筆者の屠畜場取材案内を務めた男性)から説明してもらうと、

「家畜をつぶして肉にするのはいいことなのに。僕のまわりには嫌がる人なんていないですよ。ミシシッピーより東の連中はどうか知らないけどね」