愛知県大府市議会の一般質問(6月10日)で、保育施設での性被害を訴える母親の思いが代読された。しかし、「私生活にわたる言論」を理由に削除要求の声が出された。議員に現状を訴え、思いを託した園児の母親は「私の思いが不適切な表現とされ、削除という話になったのには失望感があります」と話していた。
最終的には、質問した議員の「申し出」という形で、個人特定されかねないとされた箇所をのぞき、部分的取り消しとなった。被害内容は議事録に残される。今後、市としてはどのように対処していくのか。
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発言内容が具体的すぎたため、部分的に取り消し
質問したのは、久永和枝議員(日本共産党)。質問内容は「幼児期などの子どもの性被害対策について、市はどのように考えているのか」「保育園や幼稚園での性被害などの事案に対して、市はどのような対応をとるのか」「子どもから助けを求められたとき、子どもの人権を守る立場で、市が状況調査に介入できる制度を導入する考えは」などと、具体的な内容は触れずに質問した。
大府市議会録画配信(令和3年第2回定例会、6月10日、一般質問・久永和枝議員)
http://obu.gijiroku.com/g07_Video_View.asp?SrchID=718
その上で、最後に、被害女児の母親が書いた文章を読み上げた。しかし、その内容が具体的すぎたため、地方自治法による「私生活にわたる言論」にあたるのではないかと議論になったという。そのため、「全削除」との声もあったものの、最終的には久永議員からの「錯誤等」を理由にした申し出という形を取り、部分的な発言の取り消しになった。6月22日、本会議で了承された。
「発言の取り消しを求められた部分は、意見として発言した部分です。被害児童の母親の思いを文章にしたものを代読したのですが、その中で個人が特定されるおそれがあるとされた部分や児童の年齢等を、結果的に私が削除申請する形になりました。
特にこだわった部分は、母親が記した被害内容と、そうした相談があったこと。そこを残してほしかったのです。母親が書いた部分の一部は要約しましたが、『いま苦しんでいる市民がいる。不安の声に寄り添ってほしい。大府市の姿勢を注視していく』との発言は残っていますので、市民からの訴えということは察することができます」(久永議員)