世界で猛威をふるっているデルタ株(通称インド株)。感染力が従来型よりも40~80%高いとされ、WHOの発表によると80の国と地域で確認されている。

 特に感染が広がっているイギリスでは、6月9日~16日の間にデルタ株感染が7万5953件確認された。4万2323件だった前週と比べると、感染拡大スピードの凄まじさがわかる。6月には日本でも都内中学でインド株によるクラスターが発生している。

 このインド株を水際で留めようと、特定地域からの入国者には10日間の隔離(通常は6日間)が義務付けられている。隔離期間中は宿泊施設に毎日3食が用意されるが、外出も換気もできない10日間は、想像よりもずっと過酷なようだ。大人だけならまだしも、そこに幼子がいたら――。

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 0歳児と4歳児のいる、家族4人での「隔離10日間」を取材した。(全2回の1回目。後編を読む)

隔離生活を送ったホテル

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「10日間、何度もイラっとしました」

「感染力が大きいインド変異株の流入を防ぐために水際対策が必要なのは、私だって理解しています。でも、ハナから『おまえら、陽性だろう』といった感じで扱われて……。強い言葉で言うと人権侵害じゃないかと思う。キツい10日間でした」 

 こう話すのは、7年間赴任していた南インド・ベンガルールから、このほど家族で一時帰国した北村研二さん(=仮名。36歳、輸送関連メーカー勤務)だ。

 インド(及びネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブ、スリランカ)からの帰国者への水際対策が5月27日から強化され、「指定場所で10日間待機」「入国後3日目、6日目、10日目に改めてPCR検査」が課されているなか、北村さんは妻のユカさん(=仮名。34歳)、子ども2人(4歳男児・8か月女児)と共に6月6日に成田空港に着いた。そしてそこから「帰国者コロナ隔離」が始まった。

部屋のなかからの風景。窓を開けるのは禁止

「10日間、何度もイラっとしました」

 順を追って、お聞かせいただこう。

 空港に着いて、ソーシャルディスタンスを十分にとってパイプ椅子が並ぶ部屋へまず案内された。

隔離生活について説明を受ける

 14日間隔離(ホテル10日間+自宅4日間)などの説明を受けたのち、「誓約書」「健康カード」「宿泊施設登録票」に署名。「陰性証明書」のチェックとPCR検査が行われ、続いてスマホへのビデオ通話、位置情報確認アプリ(OEL)、接触確認アプリ(COCOA)などのダウンロードをする。そういった流れだった。