国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、50歳時の未婚割合は直近20年で急激に上昇している。自ら結婚しない人生を選択する人が増えたことも一つの要因としてあるだろうが、一方で結婚したくてもできない人が増えているという考えもある。
フリーランスの記者である石神賢介氏は30代で一度結婚と離婚を経験し、57歳時点では独身だったが、“やっぱり結婚したい”と考えるようになり、さまざまな婚活イベントに参加。その体験をまとめて『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)を上梓した。ここでは、同書より一部を再構成し、57歳からの婚活事情のリアルをお届けする(全2回の2回目/前編を読む)
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メイクがどろどろとける婚活ハイキング
婚活ハイキングにも参加した。週末に奥多摩を歩く婚活イベントだ。
出かける前、服装に悩んだ。ハイキング姿がいいのか。婚活を強く意識したほうがいいのか。判断に迷ったのだ。歩く距離は5キロほどと言われていたが、山を登るのか、沢を歩くのか、どのくらいの難易度の道なのかがわからない。
僕は結局、ジーンズに長袖のTシャツ、ラフなジャケットで出かけた。汗を拭くためのタオルや女性と連絡先を交換するための筆記具は布製のトートバッグに入れた。
そうだ、お菓子を持っていったらどうだろう。
自宅を出て、ひらめいた。ハイキングでは小腹がすくかもしれない。体を動かすので甘いものを欲するかもしれない。そのタイミングで女性参加者にお菓子をさりげなく分けたら、ポイントアップできるはずだ。甘いものは疲労を緩和させる。そこで一つずつ袋分けされたビスケットと飴と、自分用の水とお茶をコンビニで買った。
集合は、JR青梅線奥多摩駅前広場に午後1時。
男性のほとんどはジーンズか綿パンをはき、上半身はトレーナーか長袖のTシャツにジャケットやブルゾンを羽織っている。靴はスニーカーだ。
一方、女性は山登りの服装と、ショッピングへ出かけるようなおしゃれなファッション。両極端だ。
参加者は男女各20人で計40人。2列縦隊で歩きながら会話を交わし、5分ほどで相手をチェンジする。スタンダードな婚活パーティーと同じだ。ただし会場は野外。会場費がかからない分、主催側にとってはコストパフォーマンスのいい企画だ。
天気に恵まれたこともあり、40人の“婚活隊”は和気あいあいと進んでいく。ガードレールに座ってカップ酒を飲むオジサンたちや、サイクリングで休憩中のグループが、なにか異様なものを見るように婚活隊を見送る。
30分ほど歩き休憩した。そこから樹々に囲まれた緩やかな坂を上っていく。おしゃれ派女子のメイクがどろどろととけて頬を流れ始めた。疲労で脱落しそうな女性もいて、当初のスケジュールにはなかった短い休憩を取る。