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おぐら 高校を卒業したあとは、大学に行くかショップ店員になるかで迷ったんでしょ? 

鈴木 マウジーのオープニングスタッフに応募しようと思ったんだけど、聞いたらマルキュウの店員の給料がすっごい安くて。だったら大学に行ってバイトでもいいかなと思って。

おぐら それが結果として、履歴書的には明治学院高校、慶応大学、東京大学大学院になるんだからすごいよ。

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鈴木 いろいろ先延ばしにしていった結果、学歴がついてきた感じ。

おぐら その間の履歴書には書けないエピソードの数々が、今回の『おじさんメモリアル』にはいろいろ書いてあるわけで。たとえば、まだ処女だった15歳の時に、渋谷のCDショップでいきなり「オナニー見せて」って言われて1万円をもらったエピソードとか。

鈴木 雑誌「クリーム」の編集者を名乗る胡散臭いおじさんから「取材」のていで声かけられて、1万円と引き換えに、男子トイレの個室でオカズになった話。当時は『資本論』を読んでなかったけど、そこで資本主義を体感して、すとんと納得したんだと思う。

おぐら オナニーを見せてお金をもらったことで、『資本論』を理解した(笑)。

鈴木 ブルセラショップで100円のパンツを1万円で売っていたJK時代は、中卒の子もいたけど、学芸大附属高、慶女、青学の子とか、実践女子みたいないいトコの女子高の子もいたよ。

おぐら 涼美先生がこの本を書いたことで、女子高生側の心情とか背景は知ることができたけど、反対にパンツを買っていたおじさんたちの気持ちも知りたくなった。

 

鈴木 私たちの眼の前には生々しい現場があって、私はその場で見ていたし、おじさんたちもそっち側から見ていただろうけど。

おぐら まさにそれ。『おじさんメモリアル』のあとがきにも書いてあった。

〈私たちは確実に目撃している。おじさんの悲しみの奇行や愚かな幸せを間近で直視し、レタしゃぶ屋で共有する。ここまでおじさんの悪口や陰口を延々と連ねてきて、今更最後に味方のふりをするつもりはないが、私たちはちゃんと見ていたからね、とだけ言ってあげたい。怖いと思うか、救われるかは、人とタイミングによるのだろうけど〉

鈴木 おじさんたちが反論してこなければ、私はこのまま一方的に悪口を言い続けるのかな(笑)。

#2に続きます

写真=鈴木七絵/文藝春秋