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売れる「就活本」で大学生の進路希望がわかる? 東大・京大は研究者、早稲田はメディア、慶應はプレゼン

2021/06/29
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東大で1位になったのは…

 東大で1位、京大で6位にランクインした『学振申請書の書き方とコツ』(大上雅史 講談社)が早慶では10位に入っていないのも興味深い。「学振申請書」とは日本学術振興会特別研究員に選ばれるための申請書のことを指す。これに選ばれると、数年にわたって研究費が支給されるので、アルバイトなどをせずに研究に専念できる。主に修士課程の学生が購入したのだろう。

『学振申請書の書き方とコツ』

 なお、東大・京大では月によっては『日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術』(エイドリアン・ウォールワーク 講談社)や『科研費獲得の方法とコツ』(児島将康 羊土社)など、明らかに大学院生や研究者のニーズに応えた本がベストテン入りする月もある。東大・京大においては研究者を目指すことが進路として存在感がある現状が現れている。

 前提として、各大学で売れる書籍は、必ずしもその大学や学生の「特徴」をあらわしているとは言い切れない。学生数や学部・学科の構成、教科書などの各科目で指定するものなどの影響を受けるからだ。大学生協がプッシュし、入荷量を増やし、「売れた」というよりも「売った」本も存在する。Amazonなどの通販や、各種古本流通、電子書籍など書籍の入手方法も多様化していて、大学生協の売上がすべてではない。とはいえ、各大学やその学生の特徴なども見えなくはない。

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『スマホ脳』

 この売れ筋就活対策本から見えてくるものは何だろうか。

 ランクインしている就活本は、SPI、WEBテストなどの一般的な就活対策本、業界・企業研究本の他、東大ケーススタディ研究会による「ケーススタディ」や「フェルミ推定」の本がランクインしている。

 いわゆる「上位校」の明確な特徴の1つは、就活難関企業、つまり総合商社、外資系のコンサル会社やIT企業の選考を突破するための就活本が売れているということだ。