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連載池上さんに聞いてみた。

広がる中国の国際的イメージ低下。でも…「不買運動」につきものの“ジレンマ”って?

広がる中国の国際的イメージ低下。でも…「不買運動」につきものの“ジレンマ”って?

池上さんに聞いてみた。

2021/06/29
note

Q 「新疆」産のものを使わない抗議、どのくらいの効果を期待して良いの?

 下着大手のグンゼが6月16日、中国・新疆ウイグル自治区産の綿花の使用を中止することを明らかにしたとニュースで見ました。「新疆」の製品をめぐっては、4月にもカゴメが新疆産トマトを使わないと報じられていたのを見た覚えがあります。

 背景には新疆綿をめぐって、中国側がウイグル族に強制労働をさせた疑いがあるとして、特に欧米が問題視している状況があるとは解説されていたのですが、一方で、現地の製品が避けられ、新疆の人たちの商品が買われなくなると、彼らにもさらなる悪影響が生まれてしまわないかという不安も感じてしまいます。この「不買」は実際どれほどの効果が期待できるのでしょうか。(30代・女性・主婦)

綿の収穫をするウイグルの労働者 ©️iStock.com

A 不買運動には“ジレンマ”があります。

 不買運動によって、現地の弱い立場の人に打撃を与える恐れがある。これは不買運動につきもののジレンマです。たとえば軍事クーデターの起きたミャンマーの軍関係の企業の商品の不買運動をすると、そこで働いている一般市民の生活を脅かすことになりかねないのです。

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国際社会では北京オリンピックへの批判も高まっている ©️Getty

 新疆に関しても事情は同じでしょう。しかし、新疆の製品の不買運動が盛り上がれば、新疆の人たちの生活が苦しくなり、それは中国政府の責任になります。中国の国際的イメージの低下にもつながります(既に低下していますが)。そうなると、政府としても、批判を受けないように人権弾圧の手を緩めるのではないか。これが不買運動をしている人たちの狙いであり願望であるのですが、実際のところは、それほど大きな打撃を与えない可能性が高いでしょう。不買運動は、「人権弾圧は許さない」という政治的アピールなのです。

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