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 たのきん映画はもはや「観に行くのが当たり前」。公開されたら迷いなく足を運んでいた。ストーリーがサッパリわからなくとも、大画面で3人が映ればOK! 実際、今思い出そうとしても、どれ一つとして詳しいストーリーが思い出せない。アイドル映画はそれでいい。

田原俊彦の歌声には青春が詰まっている

 たのきんトリオの個性が際立ったのは、ドラマや映画より「音楽」だろう。近藤真彦は語尾を強めに歌うクセも含め、男らしく白黒はっきり、ケジメな世界観。野村義男率いるバンドThe Good-Byeはリズムと言葉遊びがとにかく粋。聴いていて男子校の恋バナが聞こえてくるような楽しさがあった。

 そして、田原俊彦の歌はウキウキと哀愁のバランスがたまらない! 舌足らずで、語尾も音程も緩やかにバウンドする。雲に乗っているように、ふんわりと揺れるのだ。そこから広がる空気の色はまさにパステルカラー。初恋の次、人生で2番目くらいの恋のトキメキと不安を同時に感じられて、胸がウズウズする。母性本能が爆発する!

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「ハッとして!Good」「ブギ浮きI LOVE YOU」の多幸感、「悲しみTOOヤング」の切なさ。

2019年のデビュー40周年ライブ ©文藝春秋

 田原俊彦の甘え声は、青春が詰まっている。きっと彼の歌を誰がカバーしても、物足りなく感じるだろう。

ジャニー喜多川の提案

 田原俊彦の歌の世界を美しく彩ったのが、当時ポニーキャニオンの音楽制作プロデューサーだった羽島亨氏だ。

 羽島氏の著書『ヒット曲は発明だ!』(ポニーキャニオン音楽出版)に書かれた制作秘話はとても興味深い。田原俊彦の楽曲制作の重要なキーになったのは、なんと1977年にアメリカで大ヒットした映画「サタデー・ナイト・フィーバー」!

 映画のサントラも驚異的な売り上げを記録。楽曲提供をしたビー・ジーズも一躍人気者となり、アメリカではメロディアスなディスコ・ミュージックが注目されるようになっていった。