アダルト業界とは無縁だったごく普通のサラリーマンが、会社の倒産、妻との離婚を経て、ひょんなことから次の職業に選んだのは…AV男優! そんな実体験をもとに描かれたエッセイ漫画が、現在「くらげバンチ」で連載中の『AV男優はじめました』(新潮社)です。「男優」としての実体験を赤裸々に描いた本作は、業界の内外を問わず多くのファンの心をつかんでいます。作者の蛙野エレファンテさんは、5年間の男優キャリアの中で、出演作品数は250本を超えると言います。そんな蛙野さんが語る、謎多きAV業界の裏側とは?

蛙野エレファンテさん ©️文藝春秋

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「男優のバイトだったらやらせてあげる」と言われ…

――普通のサラリーマンからAV男優へ、突然の転身ですよね。なぜ男優の仕事を選んだのでしょうか?

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蛙野 漫画にも描いているんですけど、最初は友達の友達の紹介でした。たまたま行った飲み会の時にその人から「AVの仕事やってるんや」という話を聞きまして、冗談半分で「え、じゃあちょっと見学させてくださいよ」と言ったら「それはダメだよ」と言われて。ただ、その代わり「男優のバイトだったらやらせてあげるから、この日空いている?」みたいに言われたんです。

 それで「人生の中で一度くらいは、そういうちょっと変わったことをやってもいいんじゃないか…?」という気持ちが出てきてしまって。顔もモザイクで隠してくれるというし、軽い気持ちで現場に行くことになったんです。

蛙野エレファンテ著『AV男優はじめました』より ©新潮社

――なかなか軽い気持ちで行かなくないですか(笑)。

蛙野 いや、そうなんですけどね。誘われた時は、勤めていた会社が倒産して、妻とも離婚した後でしたし、誘ってくれた友人に「もう1回結婚も経験したし、いまは彼女もいないし、いいじゃん。失うものないやん!」みたいな風に煽られたのもありますね。そう言われると「うーん…そうねぇ」くらいの感じでした。

――最初の撮影はどんな感じだったんですか?

蛙野 「汁男優」と聞いていたので、「ブリーフを穿いた男の人がたくさんいるイメージ」しかなかったんですよね。だから、「撮影には白いブリーフは持っていくのかな? それとも向こうで買うのかな?」とか思いながら、結局、普通のパンツで行ったんです(笑)。特にその辺の説明もなくて、普通に喫茶店で待ち合わせて、そこから現場に行ったので現実感もないし、「これから何が起こるんだろう…」みたいな気分でした。