文春オンライン

「あきらかに気配がおかしいって…」警察による“乱交パーティー”や歌舞伎町の“幽霊騒動”…コロナ禍の歓楽街で起きている“事件”

『歌舞伎町コロナ戦記』より#2

2021/07/06
note

ラブホで起きた連続女性絞殺事件

 率直に言ってこの手の話はよくある。風評被害になるので場所は述べないが、歌舞伎町二丁目にあるそのビルは筆者も知っている。が、これと言って「気配」や「恐怖」を感じたことは一度もない。

 筆者がなぜ、この埒もない噂話を取り上げるかというと、歌舞伎町で従事する風俗嬢たちが日ごろから感じている漠然とした不安のようなものが、このような話を流布させるのではないか? と考えているからだ。

 そもそもの話として、歌舞伎町には「怪談」の元となるような出来事が多いのは事実だ。前述の風俗嬢はこの幽霊ビルのほかにも、4年前に火災でひとりの女性が亡くなった某ラブホ跡(現在は廃業)も、“心霊スポット”にあげていた。そしてその亡くなった女性は高齢ではあるが、彼女たちの同業者というのが定説だ。

ADVERTISEMENT

 驚くのは、古い事件まで彼女たちの間では共有されていて、語り継がれていることである。1981年、歌舞伎町二丁目の3軒のラブホで起きた連続女性絞殺事件がそれだ。これは当時、相当、センセーショナルに取り上げられたが、結果的に今現在も犯人逮捕には至っておらず、いわゆる未解決事件となっている。

©iStock.com

 これらの事件に共通しているのは、女性が単独でホテルで死亡していることだ。つまり、いまや主流である派遣型風俗に従事する女性たちにとって、過ぎた出来事や他人事ではない、強烈な当事者性がある。それが、冒頭にあげたような、幽霊騒ぎ=漠然とした不安に繋がっているのではないだろうか。

 彼女たちの話を聞いていると他にも、心霊スポット認定されそうな場所はある。ホスト絡みで、飛び降り自殺(と自殺未遂)が多発したビルなどもそう。歌舞伎町二丁目中心部の某ビルなどは、自殺防止対策まで取ったという。筆者は以前そのビルで、直後の現場で生々しい血痕を目の当たりにし、痛ましい思いをしたことがある。

 コロナ禍で客足が悪いといっても、そこは日本一の歓楽街である。今日も彼女たちはそこはかとない不安を抱えながら、仕事に従事する。季節外れの幽霊騒動は、そのあらわれと思えて仕方ない。

歌舞伎町コロナ戦記

羽田 翔

飛鳥新社

2021年6月1日 発売

「あきらかに気配がおかしいって…」警察による“乱交パーティー”や歌舞伎町の“幽霊騒動”…コロナ禍の歓楽街で起きている“事件”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー